爆撃機には、多くの欠点がある。爆撃機の基地は、敵の核先制攻撃に対して無力だ。爆撃機自体は、偉大な大国の強力な対空防衛の打破に関しておぼろげなチャンスを持ってはいるが、爆撃機の巡航ミサイルの移動速度は遅く、搭載量も少ない。しかし爆撃機は、弾道ミサイルにはない、極めて重要な性能を持っている。爆撃機は、その基地から核兵器を搭載して飛び立ち、新たな情報が入った場合には、引き返すことができるのだ。政治的指導部は、特にためらうことなく、早期警告システムのデータに基づいて当番の爆撃機を発進させることができる。冷戦の経験によると、早期警戒システムのデータは、十分に間違っている可能性がある。世界が核戦争の危機に瀕している重要な時、爆撃機は、核兵器を搭載してあらかじめ定められた安全な空域を当直飛行することができ、国の指導部は、核による報復を保証する予備手段があることを認識する。
現代の爆撃機の武器は巡航ミサイルであるため、戦略的任務を遂行する際に、防衛された敵の領土に侵入する必要はない。ロシアのマスコミ報道によると、ロシアの最新の戦略巡航ミサイルX-101の射程距離は5500キロ以上。これは、誰にとっても効果的に管理するのが難しい人のいない北極海の上空から米領土を、そしてロシア領土の遠方から欧州を射程に収める。しかし、爆撃機が自らの役割を遂行するためには、幅広い行動範囲と長大な航続距離を有する必要があるほか、空中給油ができることも特に重要だ。中国の新爆撃機H-6Kは、アジア太平洋地域で巡航ミサイルによる攻撃を行うための優れたプラットフォームだ。
しかし、その行動範囲と航続距離は依然として不十分で、空中給油もできない。中国とロシアの大きな違いは、中国は米国からさらに遠い場所に位置しているということだ。北米と中国を隔てているのは無人の北極ではなく、外国の領土であり、太平洋の活気のある、よく開発された地域だ。中国の爆撃機が米領土に向けて自国のミサイルを発射できる地域は、完全に安全なものとはならないだろう。中国の爆撃機が米領土に対して攻撃を行うためには、最初の目的である島々を通過して、その後、米国と日本の戦闘機や、長射程の艦対空ミサイルからの脅威にさらされながら、太平洋上空を十分に長距離飛行する能力を有する必要がある。そのため、中国の新爆撃機の能力は、その概念で米国のB-2に近く、最大限レーダーに探知されにくくすることに重点が置かれると考えることができる。同時に中国は恐らく、行動範囲の向上や、空中給油システムを搭載するなどして、H-6Kの改良を続けるだろう。これによって、中国は、H-6Kを使って、同地域における米国の基地や同盟国に脅威を与えることが可能となる。また、非核の巡航ミサイルを装備する強力なH-6K部隊は、あらゆる地域紛争において中国の切り札となるだろう。