「シーラ・シビーリ2」は、西ルートでロシア産ガスを中国へ供給するもの。「ガスプロム」とCNPCは、2014年11月に、価格に関する枠組み協定に調印し、2015年5月に、供給条件に関する合意に署名がなされた。同プロジェクトは、以前は「アルタイ」と呼ばれ、最近、「シーラ・シビーリ2」と名称が変更されたパイプラインを経由して、西シベリアの産地から、中国へ天然ガスを供給するものだ。年間300億立方メートルのガスを供給することで合意されている。なお、パートナー企業は、将来的に、ガスパイプラインの2本目および3本目の支線を建設する可能性もあるとしており、その潜在的な輸送能力は、最大で年間1000億立方メートルとなる。パイプラインは、シベリア西部を通り、中国の新疆ウイグル自治区まで伸びる計画。ロシアは、「西の」ガスパイプラインを用いて、トルクメニスタン、カザフスタン、ウズベキスタンとの中国市場をめぐる競争に加わる意向。この3カ国は、ガスパイプライン「中央アジア・中国」を経由して、同じく新疆ウイグル自治区へガスを供給している。
専門家たちは、考えられるいくつかの原因を挙げている。その一つは、中国経済の鈍化だ。これは、ガス需要の低下につながる。したがって、価格が下がる。「ガスプロム」は、価格に関する「歩み寄り」に同意している。しかし、それは、わずかなものであり、大きく譲歩することは望んでいない。なぜなら、ガスパイプラインの建設には膨大な費用がかかるからだ。中国は、ガスパイプラインをより安く建設する用意があると発表し、中国企業が参加する入札を行うよう提案している。中国企業は、ロシア部分のパイプライン建設に、中国の労働力と設備を使用するようにとの条件を提示している。これに対して「ガスプロム」は、中国の労働者などを誘致する必要はないと答えた。
西ルートのガスパイプラインは、袋小路に陥ったのだろうか?露中分析センターのセルゲイ・サナコエフ所長は、状況は複雑だが、決して行き詰ってはいないと述べ、次のように語っている。
「もちろん私たちは中国と合意するでしょう。なぜなら国益の観点から見た場合、これは互恵的な取引だからです。ロシアにとって中国への供給は、輸出を多角化できるという点で利益があります。中国にとっては、エネルギーの安定供給を得るという点で利点があります。加えてロシアは、自国の戦略的パートナーとして、中国に安定したガス供給を長期的に保証する用意があります。恐らく、『ガスプロム』と『CNPC』が合意に達するためには、政治レベルでの介入が必要となるでしょう」。
サナコエフ所長は、約10年にわたった東ルートによる中国へのガス供給に関する話し合いでも、同じような状況がみられたが、最終的に、2014年5月に、中国の上海でロシアのプーチン大統領と中国の習国家主席が会談した後、契約に調印がなされたと指摘した。サナコエフ所長は、予定されているロシア大統領の中国訪問が、西ルート問題の解決に寄与する可能性があると考えている。プーチン大統領は9月初旬、北京を訪問する。北京では、中国人民の抗日戦争勝利70周年の記念式典が開かれる。