ASEANフォーラムでは、フィリピンとベトナムが、クアラルンプールを訪問する米国のケリー国務長官の積極的な内密の支援の下で、中国が南シナ海でインフラを強化していることについて非難を求めると見られている。中国のインフラ整備は軍事目的の可能性があるとして危惧されている。マレーシアとシンガポールは今まで南シナ海での中国の活動について直接批判することを控えてきたが、マレーシアも同海域の係争諸島および岩礁の領有権を主張している。なお、カンボジアとラオスが中国を非難することは恐らくないとみられる。ASEAN加盟10カ国のうちのその他のインドネシア、ブルネイ、ミャンマー、タイの4カ国は、まだ中国に対する自国の立場を決定していない。
中国の王外相はASEANフォーラムを前にしたシンガポールとマレーシアへの訪問を、相手国に厳しく警告するために利用した。外相は、南シナ海の問題は中国とASEANの問題ではなく、これはフィリピンと中国の関係、そしてベトナムと中国の関係の問題であり、この問題を解決する場はASEANではなく、南シナ海における当事者間の行動宣言の枠内で行われる会談であると指摘した。
ロシア科学アカデミー東洋学研究所のドミトリー・モシャコフ専門家は、クアラルンプールで開かれるASEANフォーラムでは、ASEANへの影響力の強化をめぐって中国と米国が激しく対立する可能性があるとの見方 を示し、次のように語っている。
「我々の間では、ASEANをめぐる争いがずいぶん前から繰り広げられている。米国は現在、南シナ海での紛争を利用し、フィリピンとベトナムに一定の保証を与えて同地域における自国の立場を強化しようとしている。一方で中国は、ASEAN諸国を経済的および政治的に中国市場の『大中国圏』へ組み入れ、ASEAN諸国との政治協力をより積極的に発展させようとしている。クアラルンプールでは、この米国と中国の2つのアプローチが非常に明確に示されるだろう。」
政治学者のウラジーミル・エフセエフ氏は、米国が暫定勝利を獲得し、ASEANが南シナ海での行動に対して中国を非難する宣言を採択するための「手助け」をするかもしれないとの見方を示し、次のように語っている。
「米国は、中国を非難する決定を推進することができる。アジア太平洋地域では、中国のあらゆる行動に対する大きな警戒心があることを考慮する必要がある。中国がスプラトリー諸島(南沙諸島)で軍事インフラを建設し、海上輸送路を封鎖するのではないかとの深刻な懸念がある。」
中国には、ASEANとの関係において独自の切り札と優先方針がある。それは、自由貿易圏の枠内における協力の拡大とシルクロード経済ベルトの共同建設だ。王外相が、ASEANのパートナー国に具体的なプロジェクトと、ASEAN加盟国からの財政支援を提案する可能性もある。これはクアラルンプールで開かれるフォーラムでの中国とASEANの今後の関係に関する協議の性格を大きく変える可能性がある。