中国の「呼びかけ」は、一種の警告である。ワン・イー外相はクアラルンプールのASEANサミットで、中国は南シナ海の人工島建設を終えた、と発表した。では島に滑走路が建設されるのか。ワン外相はとげとげしく、それはフィリピンに聞いてくれ、と述べた。
フィリピン外務省のチャルルズ・ホセ報道官は、中国が人工島建設を終えたのは確かだが、中国がそこにインフラ建設を行うかどうかは別問題だ、と述べた。中国が今後島で何をするのか監視するのに、フィリピンはさらなる手段を必要としている。日本の偵察機がそれには恰好のものだ。
一方日本もこの地域で自らのゲームをプレイしている。ロシア科学アカデミー極東研究所のワレーリイ・キスタノフ氏はそう見る。
「南シナ海では米国が活発に活動している。米国こそ最重要の散兵なのだ。当人によれば、船舶・航空機の航行の自由を守っているのだそうだ。そこに米国は、中国と領土紛争を抱える、日本などの国を引き込んでいる。日本は日本で、中国の注意を東シナ海からそらすために、米国の助けがほしい。また日本は、米国が、もし中国が尖閣を攻撃してきたら日本とともに戦う、と約束してくれたことに、何らかのお返しをしなければならない。いま米国は世界最高峰と名高い日本の新式対艦機を動員して、南シナ海パトロールについて日本に一役を買わせようとしている。また、中国とASEAN諸国の領土紛争が継続することも日本には利益だ。だから日本はフィリピンとベトナムに大型偵察船を供給し、船員の教練を行うのだ」
ASEAN諸国外相は2012年のプノンペン会合で、中国の南シナ海における活動をめぐる見解の相違により総括宣言を採択できなかった苦い経験を繰り返すところだった。今回は採択できた。もっとも、妥協にみちたものにはなった。フィリピン・ベトナムをはじめとする一部諸国が中国の南シナ海における活動を深刻に憂慮する一方で、中国の戦略パートナーであるカンボジアは辛辣な表現をブロックした。またマレーシアは、自信南シナ海の島嶼をめぐり中国と領土紛争を抱えていながら、穏健な立場をとった。タイ外相タナサク・パティマプラゴルン将軍が公に、もし女だったらワン・イー大臣閣下に恋しただろうと宣言した以上は、タイもまた、あまりに反中的な文言は主張できなかった。タイ外相によれば、タイ中関係は今、いつになく良好である。
ASEANクアラルンプール・フォーラムで南シナ海問題における一定の「熱度の低下」が認められると専門家らは言う。米国のケリー国務長官さえ、新島建設を停止するとの中国の声明に満足げだった。彼はこれを、他ならぬ米国の努力によって勝ち得た、中国に対するわずかな勝利と見なしているのかも知れない。