米国を発展させるためのアプローチについて、トランプ氏のオリジナリティは、「お得な取引」という概念に基づく新外交政策を福祉の源泉のひとつと見る点にある。これが彼の外交ドクトリンのポジティブな側面である。ナガティブなそれは、取引が強硬に、決然とそして排他的に米国の利益を目指して行われるという点である。トランプ氏は候補者として演説で中国を口撃した。中国は平価を切下げ、米国市民から雇用を奪い、「米国経済を食いものにしている」というのである。トランプ氏の演説では中国が何度か言及された。氏は「中国人を敬愛している」というが、中国は彼の目には「筆頭敵国」として映っているらしい。
トランプ氏は、国内の失業者数は少なくとも半減し、自分は「雇用大統領」となる、とし、再び外交政策、「力の立場からの取引」というイデオロギーに回帰する。たとえばサウジアラビアは、米国に安全を保障されていることに対する見返りを支払うべきだという。疑わしいテーゼだ。サウジは既にいっぱしの地域大国として、中東の戦争と平和の問題を自ら解決している。
トランプ氏はまたロシア渡航を振り返り、プーチン大統領およびロシア人と共通言語を見出した、と語った。トランプ氏はどうやら特にウクライナ問題を強調することなく、軍事的声調で語られることが頻々となった反ロシア的レトリックに驚かされた米国人の目のなかで、明らかにポイントを集めている。
こんな疑問が湧くのも当然なことだ。トランプ氏が大統領になる可能性はどれほどか?多くの人がトランプ氏を泡沫候補と思っている。しかしありきたりのことをありきたりの言葉で言うありきたりな顔ぶれに見飽きた有権者らが「制御不能のトランプ氏」になだれこむ可能性もある。その判断に独立自尊の風があること、また、たとえ論争的であるにはせよ、明らかに新しいアプローチはたしかに魅力である。
その外交観については、疑わしいプラグマティズムや強硬さはありながら、おそらく米国の評価や米国の価値を他の世界におしつけるのでなく合意をする願いが首長されると思しい。
最新の調査では、トランプ氏はジェブ・ブッシュ氏をはじめとする共和党の他の候補に確固たる差をつけている。