著名なロシア人東洋学者で元駐日ロシア大使のアレクサンドル・パノフ氏は、国防予算増額に関する求めを肯定的に評価し、次のように語っている-
「何も驚くことはない。しかもご存知のように日本の国防費は世界で最も高額でもない。中国と比較した場合、日本の国防費は3分の1だ。そのため日本を非難する理由は特にない。日本は増額分を尖閣諸島などの島を防衛するための空挺部隊の創設や諜報活動に使うだろう。すなわちこれは空母建造などのような防衛力を増強するようなものではないということだ。これは日本が中国との衝突を真剣に信じてはいないことを物語っている。IS対策への資金拠出についても驚くことは何もない。なぜなら日本国民は中東で一度ならずテロリストたちの犠牲になっているからだ。私は、国防費の大部分はIS対策を目的とした情報、諜報活動に使われるのではないかと考えている。また日本が中東にある日本の大使館のセキュリティーを強化させる可能性もあるだろう。これは日本で常に語られている対テロ活動の強化に関する理論と一致している。私の見解ではこれは完全に正常な行動であり、ここに異常なものは何も見当たらない」。
一方で中東に関する著名なロシア人専門家で、ロシア戦略研究所の所長顧問を務めるエレーナ・スポニナ氏は、IS対策の資金が効果的に使われない可能性もあるととの見方を示し、次のように語っている-
「初めに指摘したいのは、IS対策に関する国際社会の取り組みに加わるのは正しい決定だということだ。しかも日本国民はすでにISのテロリストたちの手で苦しめられている。一方でこのような割合の増額は、IS対策費としては恐らく不十分だろう。加えて私は、これらの資金の全てがしかるべき形で使用されないのではないかと危惧している。残念ながら米国はずいぶん前からシリアにおけるテロリストとの戦いに加わるよう日本を説得している。それは非常に奇妙なもので、まずシリア政府ならびにシリアのアサド大統領と戦っているシリア反政府勢力を支援するというものだ。それはシリア反政府勢力の訓練というもので、そこには戦闘訓練も含まれる。もし日本の資金がこのために使われたとしたら残念の一言だ。なぜならシリア領内で戦闘員たちがどの勢力に所属しているのかを確認する手段は全くないからだ。今日は穏健派に所属しているかもしれないが、明日あるいは明後日には様々な理由でISを含む最も過激なグループに入るかもしれない。そのため日本は諜報活動のために資金を使ったほうがいいだろう。そこには日本国民や中東出身者との交流がある人々の間などにおける日本国内での諜報活動や、例えば爆発物の検出や電子戦、盗聴、サイバー戦争などのための日本の情報機関の技術的な装備の改善も含まれる。しかし繰り替えすが、日本にとっては現在米国が行っているシリア反政府勢力の強化に関する取り組みに加わらないほうが良いはずだ。なぜならシリア反政府勢力の勝利は、中東の混乱状態を強めるだけであり、したがってテロの脅威も高まるからだ」。