キルギスの首相は7月21日、協定の廃棄通告に関する政令に署名した。そして8月12日には、キルギスのユーラシア経済連合条約への加盟に関する文書の効力が発生した。ロシア戦略研究所のアジダル・クルトフ専門家は、このような形でキルギスは自国の優先方針を定めたのだと主張している。
クルトフ氏はキルギスについて、欧米から援助を受けると同時に、隣国のユーラシア連合のパートナーとも協力しており、キルギスは長い間「2つの椅子に座っていた」と指摘している。しかし今、政治情勢が大きく変化し、キルギス指導部が、誰と、どのように、自国の戦略的関係を構築するのかを決めるときが訪れたという。クルトフ氏によると、1990年代にキルギスが外国と結んだ協定は不平等だった。そのためキルギスが締結した条約に対する旧ソ連圏のパートナーたちの評価は様々だった。ロシアは、キルギスが結んだ一連の条約では、キルギス指導部を一定の管理下に置いたり、キルギスが欧米に依存するためのある種のシステムを構築するなどの目的が見られると考え、キルギスに対する明確な主権侵害があるとみなした。クルトフ氏は、「このようなシステムの廃止は、現キルギス政府、そしてロシアの関心にもかなっている。これはすでにキルギスが実行に移した行動の続きだ。例えば2014年には、キルギスの首都ビシュケクの空港内にあった米国の基地が閉鎖され、集団安全保障条約におけるキルギスの活動も活発になった」と語っている。
クルトフ氏は、協力協定の廃棄通告について、これはキルギスと米国の関係が弱まったことを意味しているのではなく、キルギスの内政状況への米国の影響力を制限するものだと指摘している。在キルギス米国大使館は、一方的な条約の廃棄通告に遺憾の意を表した。そして米国大使館の広報部は、条約が効力をもって存続していた22年の間に、米国は「キルギス共和国が民主主義へ移行するのをサポートするために」およそ20億ドルを提供したと発表した。なおクルトフ氏は、「『民主主義発展のため』の米国の金融支援は、非政府組織の教育や活動の維持、あらゆる会議、セミナー、トレーニングなどを開催するためのものだった。これはキルギス経済への投資ではない」と指摘している。そしてまさに、米国の「キルギスにおける民主主義の発展と人権擁護に関する配慮」が、22年間続いた米国との協定を一方的に破棄する原因となったのだ。そのきっかけとなったのは、7月に米国務省が、2010年の「チューリップ革命」で大規模騒乱を扇動し、警官を殺害した罪でキルギス最高裁判所から終身刑の判決を言い渡されたウズベキスタン出身のキルギスの反政府派の活動家アジムジャン・アスカロフ被告に「人権擁護者」賞を授与したことだ。キルギス政府は、米国の行動をキルギスの裁判所への不信感の表れとみなした。そしてこの後、協定の廃棄通告に関する決定が承認された。結果、キルギスは、経済発展を優先方針とすることを選び、民主主義社会の建設における米国との協力を拒否した。クルトフ氏は、「キルギスにとっては、数十年間にわたって荒廃し、より発展している隣国から常に遅れをとっている国として残るのではなく、ユーラシア経済連合の枠内でそのリースを支えとして発展することが極めて重要だ。そしてキルギスは、そのような選択をしたのだ」と指摘している。