サイバースパイうんぬんは口実に過ぎない。米国は要するに、中国には自分の決めたルールでゲームをプレイしてもらいたいのだ。そう語るのはウラジミール・エフセーエフ氏である。
「大方、中国経済が思わしくないのをいいことに、中国を『矯正』するチャンスだとでも思ったか、中国に対し高圧的に出たところ、中国がしっかりした反応をとったものだから、圧力をかけるために制裁をちらつかせるようになったものだろう。通貨当局による人民元切り下げへの反応ということもあったかもしれない。米国は中国に対して貿易赤字なので、ちょっとでも元が弱まると、米国は大弱りなのだ。こうしたことも圧迫の動機になっているかも知れない。制裁と言うが、それがどんなものになるかは知らない。おそらく大したものにはならないだろう。制裁というものは諸刃の刃で、中米双方を傷つけるから。どちらかというと象徴的な意味合いの方が大きいかもしれない。間もなく9月3日に対日戦勝70年の軍事パレードがある。そんなタイミングで今回の制裁騒ぎとくれば、これはいささか侮辱的だ。習主席はこのパレードに合わせ、同日、北京でプーチン大統領と会談するが、そこでは立場の一致が確認されるだろう。翻ってニューヨークでは、習氏の立場は硬化するだろう。中米間の交渉前の雰囲気が険悪になっていっている。米国にとって思わしくない結果がここから出てくるかも知れない」
中米サミットを前に、米国のマスメディアはわざわざ雰囲気を悪くしようとしている。Washington Postしかり、The National Interestしかり。後者は先日、中国を「新・アジアの病人」とこきおろす反中論文を掲載した。今度の株価の暴落で中国は外交政策を修正せざるを得なくなり、地域の地政学的脅威は少なくなる、とするものだった。中国企業に対する制裁という話も、こうした反中プロパガンダの一環をなすものかも知れない。
サミットを準備するため 8月28-29日の日程で北京入りしていたスーザン・ライス安保担当大統領補佐官は中国指導部に対し、サバースパイ問題の解決に向けて建設的なアプローチを、と呼びかけた。同氏と習主席の会談がどのような雰囲気で終わったのかは知る由もない。しかしこの20年の米中関係ではじめて対中制裁が取りざたされるようになったのは、同氏の訪中直後のことなのである。