専門家によれば、日本には常に武器輸出推進派と反対派の争いがあった。前者は、日本が「普通の国」になるためには武器輸出が必要だとし、後者は、武器輸出に励めば経済が停滞してしまう、と主張する。
この後者の論拠は薄弱である、とロシアの軍事専門家、ウラジーミル・エフセーエフ氏。
「米国を見れば分かる通り、輸出向け武器の生産で製造部門は活発化する。それに、強力な武器と強力な軍隊があることで、米国の財政支出は節約されている。欧州は米国に寄生している。米国が守ってくれるのだからと、欧州諸国の大半は、軍事支出に消極的だった。日本も同じような立場だった。しかし時代はかわり、日本は今、軍国主義が勢いを持って台頭しつつある。それは防衛省を見ていれば分かることだ。今や自衛隊も本式の軍隊になろうとしている。これに応じて武器製造ロビーも力を増している」
ただ、ロビーがどんなに力を増しても、日本があらゆる形態の武器を製造するようになることはない、とエフセーエフ氏。
「たとえば対ミサイル防衛システムに連なる装備は、今後も米国が作るものを日本は買うだけだろう。もっとも、宇宙からの監視システムを含め、監視装置の一部はほかならぬ日本で生産されているのだが、これら装置は現代的装備の中に組み込まれているものだから、輸出に回されても買い手が付かないだろう。こうして対ミサイル防衛システムは武器貿易システムからこぼれ落ちるわけである。日本にシェア拡大の余地がないもうひとつの部門が弾道ミサイルだ。日本にも弾道ミサイルはあるし、核弾頭だって積める。しかしミサイル技術監視体制で弾道弾の販売は制限されているから、ここでも日本には限界がある」
しかし日本が十分競争していける部門もある、とエフセーエフ氏。
「日本は船を造っている。日本の船は優秀だ。ただし、フランスや英国といった強力なライバル造船国もあることだから、価格を下げるか、性能で大きく差をつけるか、どちらかが必要になる。一方、地上戦向け装備の開発では、ほとんど敵無しだ。特に、ロボット製品。たとえば韓国の非武装地帯ではすぐにも日本のロボットが使える。ロボット製品や洗練された通信システムの製造については日本には膨大な経験がある」
こうした部門では日本も非常に競争力の強い軍用品、準軍用品を売り出せる。また日本では、戦場で敵機を探知し、大砲やミサイルで攻撃するための、先端的無線装置も、様々なものが開発されている。