モスクワ国立国際関係大学のヴィクトル・セルゲーエフ教授(比較政治学)は、長らくEU域内は国境が透明化していたが、にも関わらず、ドイツは首尾よく国境管理を行えるだろう、としている。「国境管理は手際よく行われるだろう。しかも、管理対象は南の一部地域に限定されているのだから。しかし、管理が行われるということ自体、非常に象徴的だ。EUという構造体にひびが入ったということだ」とセルゲーエフ氏。
モスクワ大のパヴェル・カネフスキイ教授(政治学・社会学)は、国境管理というドイツの決定の直接の引き金となった移民の大挙流入それ自体は、一種の不可抗力である、としている。EUの目下の課題は、EUに流入する人びとの中から、紛争を逃れてやって来た難民と経済移民とを峻別することだ、とカネフスキイ氏。
「移民が大勢入り込んで制御できなくなるという事態はドイツにとって脅威だ。しかし、制御できる程度の移民であれば、脅威ではない。おそらく、どの人が経済移民で、どの人が戦火から逃げてきた難民なのかを知り分けるためにこそ、国境管理を再開したのだろう」とカネフスキイ氏。
セルゲーエフ氏によれば、今後の展開は、ドイツの国境管理がどのような条件のもとで行われるかということにかかっている。「これからどうなるか予断は許されない。国境管理といっても、それがどのようなものとなるのか、身分証をもたない人は一律にはねつけるのか、ほかの何らかの方法で選別するのか、それは一体可能なことなのかどうかといったことに今後の展開はかかっている」とセルゲーエフ氏。
カネフスキイ氏によれば、国境管理の再開で、EU諸国間の交通は損なわれる。「おそらく一定期間、EU諸国間の交通は滞るだろう。状況打開はいわば官僚主義の問題だ」とカネフスキイ氏。
カネフスキイ氏によれば、EUが中東からの難民に対して一致した立場を取れる見込みは低い。「今のところ、各国の対処はまちまちであり、まだ相当時間がかかりそうだ」とカネフスキイ氏。