スプートニク:安全保障関連法の成立過程において、振り返って最も問題だったのはどのような点ですか。
「昨年7月1日に閣議決定で、憲法上それまでは「できない」とされていた集団的自衛権の行使も含んだ武力行使ができる、という方向に安倍政権が大きく舵を切りました。その時点から、憲法違反であるという声が上がっていました。いよいよこの法律の審議が5月15日から始まり、6月4日には憲法学者3人により国会の場で、現在審議されている法律は憲法違反だ、という指摘があらためて為されました。本来であれば国会というところは憲法に違反する法律は作れず、憲法にのっとって法律を作っていくわけですから、その時点でこの法案は当然出しなおされるべきでした。しかし安倍政権はその指摘にも一切耳をかさず、その後の審議の中で当初言われていたこの法案の必要性という部分もどんどん根拠薄弱になり、最後には国民の8割が“まだ決めるべきではない”、6割が“この法案に反対”だという声を知りながら、強硬に採決に突き進んでいったのです。この意味で、国の基本である憲法にも違反しているし、そもそも主権者である国民の声を一切無視しているので、法律が出来上がっても法律として機能できない・機能させるべきでもない状態にある、違憲立法と言えると思います。」
スプートニク:民主党、そして阿部議員としてはどのように今後行動していきますか。また、安全保障関連法が最高裁で違憲判決を受ける可能性はあるでしょうか。
「これまで憲法に違反する法律というのは国会で作られたことがないので、ある意味で前例がない、ということも事実だと思います。これは与党が衆参両院で過半数を占め、数で全てを決していくという、民主主義とは似て非なるものでした。民主主義というのは徹底した討論によって、少数の意見も組み入れながら行っていくものですから、今の国会のあり方自体が、民主主義的な結論の出し方を妨げています。来年行われる参議院選挙では、多くの国民がこのことを意識して、野党の勢力をもっと強めて、健全な国会にしようという動き・努力が必ず生まれると思いますし、もう既に野党の間では、バラバラになっているのではなく、力を合わせて巨大与党の暴走を止めようという動きがあります。かつて日本はアジア太平洋戦争に向かうとき、多くの政党の意見を聞くのではなく、大政翼賛会というひとつの方向に雪崩をうっていった、という過去があります。その意味でも過去の過ちをくりかえさないために、民主主義とは何だ?民主主義が国会で実現するにはどうするんだ?という声が戦後70年の中で最も強くなっています。最高裁判所でこの法律の違憲性を問うということを指摘する向きもありますが、果たしてそういう形を取れるかどうかは、実際に憲法に違反している実態が起きないとなかなか裁判所にはもっていけないので、むしろそれ以前に国民の民意を、民主主義を保証するための選挙・近くは参議院選挙等に国民の注目も集まり、野党の力もそこに注がれていくと思います。」