独政治学者アレクサンドル・ラル氏はタイムズ紙が消息筋からの情報として報じたこのニュースについて、強制送還が関係するのは主にEUとの連合協定を結んでいるバルカン諸国および東欧諸国だとの確信を示している。
セルビア、アルバニア、コソボからドイツに流入した移民だけでもおよそ30万人に達している。この数は一時はシリア難民を凌駕するまでに至った。独の新たな法律では東欧からの移民は政治難民として申請する見地を持っていない。それはこれらの移民が逃げてきた国では政治的迫害もなく、内紛も起きていないからだ。こういったわけでこれらの移民はセルビアないしアルバニアに送り返される。
ラル氏はこの状況の変化について次のような考察を示している。
「つい先ごろ独では、難民を温かく受け入れている国といったうきうきした感じが支配的だった。独議会などはメルケル女史にノーベル賞を授与せよいった呼びかけまでなされていた。それはメルケル氏がこんなに人間的な側面から独をアピールすることができたからという理由からだった。独の高齢化社会は独へと働きにやってきて、これからの30年間、労働力として経済を維持する者から補給を受けるだろうという話だった。
ところがメルケル氏のお膝元の政党で彼女に真っ向から反対する勢力が現われてしまった。市長らやあらゆるレベルの長が、押し寄せる難民を収容する施設もベッドも足りず、保護のしようがないと、文字通り支援を求めているためだ。
オランド仏大統領とメルケル独首相はコントロールを失った難民の流れから欧州を守る手段を模索する。第1歩は政治難民を主張する権利を持たぬ者らを排除すること。第2にはシリア、ヨルダン、イラクからの難民の流れを縮小すること。そして最後に第3に、シリアに隣接する諸国に十分に大きな資金を渡して、シリア難民を受け入れてもらうように計らうことだ。独がどんなに寛容な人類愛や慈悲を難民に示しているとしても、自国民がパニックに陥ることなく、選挙民が断固とした秩序を求めて急進的極右政党に票を投じないよう、状況はコントロールしておかねばならない」。