現在、韓国の野党勢力は、日本の役割についての解釈について、矛盾する考えがある場合、国の劇的な歴史を、どれだけ正しく国定教科書の中に反映させることができるか、という理に適った問いを提起している。この問題について、スプートニク日本の、タチヤナ・フロニ記者は、ロシア科学アカデミー極東研究所のコンスタンチン・アスモロフ主任研究員に意見を求めたー
「新しい教科書の親日的、そして独裁的傾向に関する批判は、パク・クネ大統領に直接、石つぶてのように向けられている。左派民族主義グループの人達は、パク・クネ大統領の父親、パク・チョンヒ氏が、日本軍で教育を受け、日本との外交関係を樹立した事に注意を促している。日韓国交回復は、その結果として、韓国が経済的奇跡を起こす助けとなった。それゆえ、韓国人の中には現在も、パク・チョンヒ氏を最高の大統領と評価する向きもある。しかし民主派の野党勢力は、彼を、全くの独裁者であり、対日協力者で裏切り者だとみなしている。この事は、娘のパク・クネ現大統領にとって打撃だ。
野党勢力が選択した、反日機運が不十分だとして歴史教科書を批判する事を通して、現大統領の父であるパク・チョンヒ氏を攻撃する戦術は、野党にとって、悪い冗談のような効果を生む可能性もある。」
このように指摘した、アスモロフ氏は、さらに次のように続けたー
「(パク・チョンヒ氏の時代は)一方で、大量虐殺があり、他方で、国の近代化が進められたという現実が存在している。つまり、比ゆ的に言えば、日本人が水道の水を全部飲んでしまったと言いたがる新しい国定歴史教科書反対派の人達に、他でもない日本人が、その水道を作ったという事を思い起こさせているのである。韓国の歴史にとって、この事は、十分複雑かつ困難なテーマだ。そこには、韓国人ばかりでなく、日本人の側にも言い分がある。特に、経済面で韓国が今のような成功を収めた中で、日本が果たした役割については、そうだ。
以前日本で、他でもない日本が韓国の文明化をもたらしたとし、従軍慰安婦問題はでまかせだとした教科書が出された事があったが、この教科書を主な歴史教材として採用した学校は、全体のたった2%にしか過ぎなかった。しかし韓国では、日本の文部省が、主たる教材としてすべての学校に推薦したかのような騒ぎとなった。
一方日本国内では、すでにかなり以前から、過去の事で韓国に対し、もう謝るのはやめにすべきだ、新しい世代は、自分達の祖父の世代がした犯罪に対し責任を果たす必要はないと考える人の数が、かなり増えている。
恐らく、韓国の歴史教科書に関する問題は、そうした理由から、まだまだおさまる事はないだろう。そして別の要因として、韓国の国内問題も関係している。右派の人達は『もし我々が新しい国定教科書を採用しなければ、韓国の子供達は、北朝鮮のチュチェ思想を学ぶことになってしまう』とのプラカードを掲げて行進している。一方左派の支持者は『良い治世者は、その行動で歴史を作り、悪い治世者は、歴史教科書を書き換える』とのプラカードを手に、デモをしている。
最後にロシア極東研究所のアスモロフ主任研究員は、次のようにまとめているー
「新しい国定教科書をめぐる対立では、その原因と動機を分けて考える必要がある。野党勢力にとっては、当然、パク・チョンヒ氏の『独裁体制』を非難し、歴史を書き換え、国を裏切った者を『シロ』だと言いくるめようとする行為を非難する良い口実である。つまり、より正しく受け止めるならば、これは、歴史家やイデオローグの争いではなく、政治的な争いだということだ。ただ現在明白なのは、まさにパク・チョンヒ氏の努力のおかげで、新しい統一国定教科書をめぐる討議が、大なり小なり公開されて行われている事だ。テキスト執筆に責任を持つ専門家グループは、筋金入りの保守派ばかりでなく、様々な解釈の持主の代表者が含まれている。それ以外に、教科書の構想を決める日付は、2017年となった、つまりパク・クネ大統領の任期の事実上最後の時点である。このように実際上、新しい統一国定教科書をめぐるあらゆる問題は、彼女ではなく、彼女の後継者が取り組むことになる。
この事は、非常に重要だ。なぜなら、統一国定教科書作りの保守派の主なロビイストは、 パク・クネ後の大統領ポストを目指す人物であるからである。恐らく、この人物こそが、韓国の統一国定教科書を書くのだろう。」