韓国はたとえば、自国の主たる貿易相手国である中国に対し、よりバランスの取れた立場をとろうとしている。有名なロシア人東洋学者で朝鮮問題を専門とするゲオルギー・トロラヤ氏は、それでも韓国を動かしているのはビジネスの関心だけでなく、将来の朝鮮半島に関する戦略的関心だとして、次のように語っている。
「これで歴史の中で茶番が繰り返されるのは2度目だ。
韓国は今、1960年代に北朝鮮が演じたのと全く同じ役割を演じようとしている。当時、北朝鮮の金日成氏は中国とソ連の間でバランスを取ろうとしていた。しかも、金日成氏の場合はかなりこれがうまくいったことは認めねばならない。金日成氏は、当時のソ連と中国の対立にうまく乗っかって、かわいい子牛のように2頭の母牛に育てられた。
韓国は米中対立を利用しようと、バランスをとろうとしているが、あまりうまくいっていない。韓国はアジアインフラ開発銀行に加わって、中国に取り入ろうとしたが、米国の不満は残ってしまった。韓国は自国領土へのMD配備に合意し、米国に取り入ったが、このことによって中国をいらだたせてしまった。そして今、米国は韓国が中国へ接近していく様子を大きな憂慮をもって見守っている。これは先日、終戦70周年に関してパク大統領が北京を訪問した時にも表された。もちろん韓国は未だに米国の影響の軌道上にしっかりと残っている。中国だってこのことはよく分かっている。このため韓国との関係を再評価しようとはしていない。だが、韓国にとっては韓国の条件で朝鮮統一を行う際に中国の支援を取り付けることは非常に重要なのだ。とはいえもちろん、これが起こることはないと思うが。」
米国はこの地域での中国抑止に力を注いでいる。このためウクライナと同様、米国は韓国に対し、米国を選ぶか、中国を選ぶかという人工的な選択を迫っているのだ。影響力の大きい雑誌「エクスペルト」のアナリスト、セルゲイ・マヌコフ氏は、韓国はこのようにして米中の戦略的対立の人質状態になりつつあると指摘し、次のように語っている。
「南シナ海の領土論争に対する韓国の煮え切らない立場のなかで主要なライトモチーフのひとつに数えられるのは実際、将来の朝鮮半島統一計画だ。統一は北朝鮮体制が崩壊しなければ可能にはならない。ソ連崩壊の後、北朝鮮には唯一、中国だけが同盟国として残った。その北朝鮮は今日、中国の支援のおかげでやっと生活が成り立っている。
中国は今、時折北朝鮮に対する不満を表しているが、それでも支援を拒むことはない。同時に多くの人は、中国と北朝鮮の間の冷却化は多くの場合、本当にあれこれと世話をやこうとする韓国に責任があると考えている。」
それでも米国は同盟国のこうした立場には不満を抱いている。マヌコフ氏は、米国は、朝鮮戦争で韓国を守ってくれ、経済的奇跡を保障してくれた米国に忠実でなければならないと考えているとして、さらに次のように語っている。
「韓国に最後通牒を突きつけろとかっかと怒っている人間さえいる。または韓国は米国と南シナ海のほかの諸国を支持するか、それとも米国は朝鮮半島から撤退するか、どちらかを選べというわけだ。だが、もちろん米国自体はこの道を選ぶことは決してない。なぜなら米軍のプレゼンスは何よりもまず米国自身の国益を擁護しているからだ。」
米国は中国がアジア太平洋地域で力を伸張することを非常に恐れている。だが、クリミアのときと同様、実際に状況に影響を与えるレバーを米国はそう多く握っていない。韓国の慎重な態度はこのことをよく物語っている。