今回は、欧州の専門家たちの見解をご紹介する。中東を専門とするジャーナリスト、ハフサ・カラ=ムスタファ氏は、次のような見解を表している‐
「米国の作戦はISの活動性にも石油採掘にも一切影響を与えなかった。米国がISを攻撃し、殲滅し、弱体化させねばならなかった時に逆に、ISは繁栄し、地域全体に広がってしまったのだ。これに対して、ここ3週間のロシアの作戦の間にISの能力もその陣営も、テロ活動の資金調達手段も大きく損なわれた様子を我々は眼にしている。このことからロシアはISを実際に攻撃したが、米国は一年の大半をわけの分からないことに費やしたことは明白だ。」
テロ組織の資金調達に関する専門家で、書籍「イスラム教のフェニックス:イスラム国と中東再分割」の著書でもあるロレッタ・ナポレオーニ氏は、シリアにおけるロシアの作戦は、ISによる原油生産と原油の闇取引を鈍化させるとの見方を示し、次のように語っている‐
「実のところ、もちろん重要ではあるものの、原油はISの主な資金源ではない。最も重要な資金源は、800万人が暮らすISの支配地域で行われている税金の取り立てだ。ISは、ビジネス、そしてもろちん原油生産に対しても課税し、税金を取っている。原油を管理したり、原油を密輸した者は皆、『政府』に賄賂を支払う。密輸はあらゆる商品で大きな役割を果たしている。もちろん難民の違法輸送も同じだ。ISは国境を超える全ての人に対して課税した。越境のほとんどは、ISの支配地で難民の流れを組織している人々によって行われている。これも莫大な収入で、1週間におよそ50万ユーロを稼ぎ出している」。
ナポレオーニ氏によると、武装集団への武器の供与や支援も、深刻な状況をつくりだしている。武器の多くが、様々な理由でISの手に渡っている。ナポレオーニ氏は、「これは現金による支援よりもはるかに深刻だ」と指摘している。