通信社ブルームバーグによると、BRICS基金は新興市場を支援するファンドに組み入れられた。ゴールドマン・サックスは今回の措置について、BRICSに加盟する4カ国だけでなく、新たな投資手段にも関係しているため、投資家にとってはより有望だとの見方を示しているという。
ブルームバーグは、今回の措置が取られた主な原因として、資金の損失を挙げている。過去5年間でファンドの収益は21パーセント減少し、資産はピーク時の2010年の8億4200万ドルから9800万ドルまで低下して、88パーセント減少した。なおゴールドマン・サックスの広報担当者ゴールドマン・サックス氏は、BRICS株式ファンドの閉鎖についてコメントを拒否した。
BRICsという呼称を考案したのは、ゴールドマン・サックスのエコノミスト、ジム・オニール氏で、投資を提案されたブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国の頭文字からつくられている。後に、最後のSは南アフリカを意味する大文字に改められ、BRICSとなった。
2010年、BRICS株式ファンドは発展のピークを迎えた。しかしその後、ブラジルで一連の汚職スキャンダルが発生し、ロシアは国際社会から制裁を受け、インドでは改革ペースが鈍化し、中国の経済成長率も低下した。
なお専門家たちは、今回のゴールドマン・サックスの決定について、議論の余地があるとの見方を示している。ロシア戦略研究所・経済研究センター・外国経済部のセルゲイ・カラタエフ責任者は、通信社「スプートニク」のインタビューで、次のような見方を表している‐
「この出来事は、投資会社や投資市場レベルで行われているものだ。このようなファンドは数百、数千とある。このようなファンドの一つが閉鎖されたかと思えば、別のファンドが開設される。今、BRICS諸国の株式指標に対する投資家の視点は変化した。ロシア市場はまだ成長しておらず、ブラジルも問題を抱えている。同時に中国市場も下落した。しかし今は克服された。しかし全ての国の指標を考慮した場合、このようなファンドを維持することは理にかなわない」。
一方でカラタエフ氏は、現在の困難な状況は、BRICSの弱さを証明するものではないと強調し、次のように語っている‐
「国際通貨基金(IMF)や世界銀行などの国際金融機関の報告書では、近年BRICS諸国は、複数の国で構成された個別のグループとして分類されている。これは、このようグループの存在が世界で認識されたことを物語っている。またBRICSの展望に議論の余地はない」。
さらにカラタエフ氏は、BRICSは経済ブロック以外の役割も担っていると指摘し、次のように述べている‐
「BRICSは、経済プロジェクトとして存在しているだけではない。ただ経済および金融面で注目する点が多いだけだ。BRICSは、科学や教育分野における協力も特徴としている。最近モスクワではBRICS大学フォーラムが開かれた。すなわち、協力の範囲は、非常に幅広いということだ」。
カラタエフ氏は、BRICSの経済的な要素のみに注目するのであれば、今年の夏にロシアのウファで開かれたBRICSサミットの結果を思い出すべきだと指摘している。BRICS加盟国は、投資に関する問題を、BRICS銀行を設立することで自ら解決することにした。また外貨準備基金の設立についても合意した。これはBRICS諸国にとっての一種の「相互援助金庫」だ。BRICS銀行と外貨準備基金の設立により、IMFは競争に直面する可能性があるほか、BRICS加盟国を欧米の金融機関の影響から守ることも可能となる。