TODはアジアや途上国で都市の発展に伴い鉄道が整備され、複合開発の需要も高まっている中、日本のノウハウが生かせる場面が増えてきている。
この分野のエキスパートとして、日本の大手設計事務所「日建設計」の協力により、ボタニーチェスキー・サードには今までモスクワになかった新しいタイプの住宅が建設されている。この再開発事業に参画しているロシア企業・ピオネール社は、再開発事業のひとつの目玉として「LIFE」というマンションブランドを手がけている。従来、住宅ディベロッパーの競争が日本ほど激しくなかったロシアでは、ショールームを設置して、そこで見学から契約まで一元化して行うという方式は一般的ではなかった。しかしピオネール社のアンドレイ・グルーヂン社長は東京を訪れ、住宅そのものだけでなく、販売方法にも日本式を取り入れることを決めた。日本の住宅プロモーションに感銘を受けたグルーヂン社長は、日建設計の助けで駅前にガラス張りのスタイリッシュなショールームを建設し、顧客の利便性を追及した。
「ピオネール・モスクワ」のアルチョム・エイラムジャンツ社長によると、「LIFE・ボタニーチェスキー・サード」は非常に売れ行きが良いという。発売後一日で、総販売戸数の20パーセントが売れた程だ。「日建設計と成功体験を分かち合えた。日建設計は建築デザインだけでなく、全てのコンセプト作りに関わってくれた」と高く評価している。
今月上旬、ロシア建設住宅公営事業省との協議を控え、日本人ビジネスマンらがLIFEのショールームを訪れた。その場において国土交通省の森毅彦参事官は「モスクワでは駅から別の交通機関への乗換えが不便だったり、買い物のために遠くまで行ったりとまだまだ不便な点が多い。日本では長年にわたって、それと違う街づくりが行われてきた。日露合同プロジェクトには非常に将来性がある。国交省としても、日本企業の参加を期待している」と、日本企業の代表者らにロシアへの協力と投資を呼びかけた。
日建設計のファディ・ジャブリ執行役員は、ピオネール社以外にもロシアの様々なディベロッパーとタッグを組み、精力的にロシアでのビジネスを展開している。LIFEの成功を受けて、他のプロジェクトのオファーも来ている。折りしも先月末、モスクワ市と東京との間では都市開発・スポーツ・廃棄物処理に関する協力の覚書を締結したばかりだ。今後、日露の都市開発の協力が大幅に飛躍することが期待できる。