野党NLD=国民民主連盟の勝利は誰にとっても、中国にとっても意表をついた結果ではなかった。中国ではミャンマーで勝利したのが親米的政治勢力であり、選挙後、米国、西側、日本、豪州との連合関係の強化路線が強化されることは理解されている。だが中国がミャンマーで急進的な変化が起こるとは思っていないことは明白だ。それはテイン・セイン大統領がポストにとどまっていることだけが理由ではない。アウン・サン・スー・チー女史の子どもたちは外国市民であるため、アウン・サン・スー・チー女史には大統領になるチャンスがないからだ。中国はミャンマーであまりにも強力なポジションを占めている。中国は政治上の反対者も経済上のライバルも遠く迂回してきた。20数年間にわたってミャンマーが西側の制裁を受けていた時代、政治においても経済においてもこの国の主たるパートナー国は中国だったのだ。
ロシア外務省外交アカデミー、ユーラシア調査センターの専門家、アンドレイ・ヴォロディン氏は今回の選挙結果について中国には問題を増やしかねないものの、ミャンマーにおける中国の立場に影響することはないとして、次のような見解を表している。
「実際、選挙後に何か本質的なことは何も起きていない。なぜならば、ミャンマーにおける主たる投資国は中国だからだ。ミャンマー指導部は様々な政策、政治グループなどの政治的方向性に関わらず、中国は現実であり、中国は経済超大国であり、中国は隣国であることを十分に理解している。他の国だってミャンマーを同じように行動している。ミャンマーはいわゆる世界政治の自由なジオメトリーの一覧表のなかで行動しており、あらゆる国と関係を維持することにつとめている。こうした政策はASEAN諸国の共通する戦略のなかでは十分に機能する。この戦略は多極性を利用するASEANの集団的利益の推進を目指しているからだ。 」
ミャンマーでの野党勝利は補足的可能性を生み出している。それはまず政治的可能性であり、ミャンマーにおける西側の影響拡大のためのものだ。ヴォロディン氏は、だが中国にはミャンマーを巡る闘いで自国の立場を守る力があるとして、更に次のように語っている。
「習氏の体制で中国の政策は目に見えて活発化した。これは軍事政治メソッドだけではない。パートナー諸国とのプラグマティックな関係構築もそうだ。西欧とは先日の習主席の英国訪問を思い起こせば、明白だ。また台湾のリーダーとの交渉もしかり。ふたりがもたらした結果ははるかに先を行くもので、これについて語る人間は今のところいない。中国はASEAN諸国とも関係構築に長けている。ASEAN諸国はもちろん中国の規模も、あらゆる方向性で活発化していることも危惧しているが、それでも中国との取引には嬉々として乗っており、経済外交は伸びている。しかも米国、西側も今、内政、外交共にたくさんの問題を抱えている。というわけでミャンマーの選挙が中国との関係に影響を及ぼすことは少ない。なぜならミャンマー政権にはそうでなくても現実主義者はいるからだ。彼らは米国は遠い国であり、中国は隣にいて、主たる投資国であることを重々理解している。中国人もリアリストであり、ミャンマーが自分たちから離れようがないことくらい、百も承知だ。」
中国ミャンマー関係について、中国国際問題研究所、世界経済発展センターのジャン・ユエチュン所長の見解をご紹介しよう。
「中国とミャンマーの関係にはよい土台があり、中国はミャンマーに経済支援を行っている。しかも中国とミャンマーは発展途上国であり、昔からよい関係を維持してきている。米国、西側諸国は東南アジアで不断に自国のプレゼンスを拡大してきているのは、紛れもない事実だ。米国が5-6年前にアジア太平洋地域における均衡戦略を開始して以来、米国の東南アジアおよび中国近隣諸国におけるプレゼンスは絶え間なく拡大されてきている。米国がどこまで中国とミャンマーの関係を弱めまたはそれに影響を与えることができるのか、今の段階ではわからない。ミャンマーは自国の決定と選択の権利を持った国として発展している。私としてはミャンマーの将来は経済的にはかなりの部分、中国と関係していると思う。」
過去4年間に行われた民主改革は中国の影響下から出たいというミャンマー指導部の願いからきたものだ。これは2011年11月、当時の米国務長官のヒラリー・クリントン氏が60年ぶりに行ったミャンマー訪問のなかでも示されており、その後オバマ大統領もミャンマーを2度訪問している。だが先日、アウン・サン・スー・チー女史が中国を訪問したことは、今、スー・チは人権に関する考えがそれぞれ異なっていても、以前からの政治的反体制者とも十分に協力が行えることを示した。