日本は現在、液化したガスを受け取っている。日本が輸入している液化天然ガス(LNG)は、国際的な平均価格よりも高い。加えて、燃料として使用するためにLNGを気体に戻さなければならず、消費者に届けるためには数段階にわたる複雑なシステムも必要とされる。
日本の独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)によると、パイプライン経由でのガス輸送は、パイプラインの建設費や供給ネットワークの構築費用を考慮したとしても、東アフリカやオーストラリア、また米国からLNGを輸入するプロジェクトを実現するよりも安く上がるという。
著名なロシア人専門家のドミトリー・ストレリツォフ氏は、次のような見解を表している‐
「北海道経由で本州東岸に沿って首都圏へ直接パイプラインを敷設するのは十分可能だ。環境への懸念がいくつか表明されているが、このプロジェクトの資金面の裏付けでは、大きな反対はなかった」。
日本へ直接ガスを供給するためのガスパイプライン計画の実現には、パイプラインやパイプライン用の機器を製造しているメーカーだけでなく、ガスを供給している企業なども賛同している。これらのメーカーや企業は、北海道を経由して東京や新潟に安価なガスを供給することで、企業が集中している中央部および西部から生産拠点を東北地方に移し、東北地方の経済活動を高めることができると考えている。これは、日本経済全体の後押しにもなる。一方でストレリツォフ氏は、政治が同プロジェクトの実現を妨げていると指摘し、次のように語っているー
「2国間プロジェクトを積極的に支持する勢力もある。しかし、ロシアに反対するロビー活動もある。これは日米関係の分野と緊密につながっている。現在の地政学的状況を考慮して、米国が日露の大規模な経済プロジェクトを歓迎していないことはよく知られている。そして日本は頻繁に戦略的同盟国である米国の押しつけに従うことを余儀なくされており、自国の経済利益を犠牲にすることもある。このような不明瞭な状況の中、ロシアと日本のエネルギー協力に関する複数の分野では、少なくとも『タイム』が取られた。なぜなら、どちら側もリスクと責任を負いたくないからだ」。
一方で、日本ではプロジェクトを支持する議員グループが設立された。議員グループは、ロシア産のガスおよび石油の輸入量が2倍になっても(現在、日本のエネルギー輸入量に占めるロシアの割合はおよそ10パーセント)、「過度に依存」することにはならず、日本のエネルギー安全保障にも悪影響を及ぼすことはないと考えている。またこのプロジェクトを制裁対象にすることはできない。なぜならロシア産ガスは欧州へ供給されているが、疑問視されていないからだ。さらにプロジェクトを実現するために、特に新たな施設なども必要もない。ガスは、稼働中の「サハリン1」から供給される計画であり、コンプレッサーステーションの設置は完了している。その他、ロシア側からの多額の投資も必要としていないため、融資も必要ないということだ。
ロシア側のパイプラインの長さはわずか60キロ。地震地帯の海底にパイプラインが敷設される可能性も、懸念を呼んではいない。ストレリツォフ氏は、現代の技術でこの問題を解決することが可能だと指摘している。