アジア太平洋地域における多国間の協力については、マニラでも重要テーマとなる見込みだ。中国のFTAAPプロジェクトは多くの点で米国のTPP構想に対する代替案である。米国の提案を地域の全ての国が支持しているわけでは全くない。それら諸国は中国のプロジェクトを歓迎している。中国は経済力の増大とともにこの数年、地域の今後の統合について自らのヴィジョンをより積極的に語るようになってきている。
専門家によれば、中国のこの立場の中で新しい点は、北京がはじめて工業先進国との自由貿易圏(FTA)について語ったというところだ。これまで中国のFTAにおけるパートナーは途上国や最貧国で、中国はFTAによりそれら諸国の市場や資源にアクセスしようとした。いま、韓国との三角自由貿易圏創設に関して活発に作業が行なわれている。今年夏には、10年におよぶ交渉のすえ、中国と豪州が自由貿易に関する記念碑的合意に調印した。あらゆる技術的細部について合意した上でのこの取引により、両者はかつてない市場アクセスを互いに得ることとなった。豪州側が特に期待するのは、農産品の中国市場への輸出増大であり、中国側の期待は、電子機器、自動車の販売増大にかかる。
中国現代国際関係研究院世界経済研究所長のチェン・フェニン氏によれば、中国は今後もアジア太平洋地域の安定的経済成長に貢献していく用意がある。
「中国は常にそれに取り組んでいる。アジア経済は半分以上が中国に依存しており、世界経済は3分の1が中国に依存している。アジアインフラ投資銀行の創設もまた、インフラ建設および相互依存の工場を目指したものだ。中国は今後も変わらず、できることを全て行い、独自の貢献を果たしていく。開放政策はちょうどそれを目指したものなのだ。中国の活動は既に地域の枠をこえ、グローバルな性格を帯びている。自らの成長に取り組みつつ、中国は同時に、地域の発展をも可能ならしめている。アジア太平洋地域が成功裏に成長することは中国の利益になる」
太平洋地域のプロジェクトに加え、駐号は積極的にシルクロード経済ベルト構想を実現している。これは中国を西側の隣接諸国と結びつけるものだ。その筆頭は中央アジアとロシアであり、その先には欧州がある。こうして中国は、二面的な課題に同時にあたっているのである。国民経済の発展のための条件をつくりながら、他方ではユーラシア空間の社会経済発展とさらなる相互依存関係を可能ならしめているのである。