スプートニク「オランド大統領は、ロシアがシリア反体制派の穏健勢力を攻撃していると非難していました。しかしパリ同時多発テロを受けて自らロシア訪問を宣言するなど、ロシアと協力する姿勢を見せています。これはフランスの方針転換と言えるでしょうか。」
美根氏「もちろんアサド大統領に対してどういう態度で臨むかはロシアと欧米で非常に異なっていました。そんな折、ロシア機の爆発がテロと判明したことと、パリ同時多発テロが起こったことで、もともと大きかったISの問題が更に大きくなりました。この状況の中で、何に対して緊急に対応しなければならないのか、はっきりしてきたということです。『テロ対策を緊急に』という点では、ロシア、フランス、米国など、シリア・イラクの問題について考え方が違う国々も共通認識をもっています。
緊急、というところが非常にポイントです。緊急の問題を作り出しているのはISであり、問題の所在地が非常にはっきりしており、疑いようがありません。この状況においては、アサド大統領をどうするか、シリアの反体制派をどうするかといった問題を超越した緊急性があるのです。
フランスの外交政策が変わったとは考えていません。外交政策の転換ではなく、ロシアにとってもフランスにとっても、一刻の猶予もない問題が出てきたということです。直接被害を被ったロシアとフランスが協力するのは当たり前です。そういう意味でテロ対策のプライオリティが上がったと言えるでしょう。テロ対策は、シリア・イラクに対する政策とは別次元の問題として、区別して考える必要があると思います。
やはり、今もなおアサド大統領の処遇についてロシアと欧米の考えは違っています。ですからこの問題はISに対する攻撃対処において、足をひっぱる可能性が出てくるおそれがあります。アサド大統領に対する考えが違うということは、下手をするとISに対する対応を弱める危険性があると思いますが、今のところ、ロシアもフランスもその点を乗り越えて、IS掃討に焦点をあてているのは非常に正しいアプローチだと思います。一方で、シリアの安定をどう回復するかも同時に検討するという風に、整理して考えなければなりません。」
聞き手:徳山あすか