韓国当局は近年、国際テロリズムに関与した疑いで外国人48人を国外退去処分にした。また最近、国際テロ組織「アルカイダ」と関連を持つ疑いで、偽造パスポートを所持していたインドネシア人が逮捕された。これは、テロが韓国にとっても欧州と同じように切迫した問題であることを意味しているのだろうか?ロシアの著名な東洋学者ドミトリー・ストレリツォフ氏は、韓国はテロ対策に関する長年の経験を有していると述べ、次のように語っている-
「韓国はテロ対策に関する長年の経験を有している。これは、北朝鮮の要素と朝鮮半島が常に不安定だということと関連している。そのため、韓国の国家システムはテロ対策のための治安担当機関を十分に有している。韓国は民主主義国家ではあるが、時に彼らの活動が、民主主義の古典的な基準と対立することもある。しかしこの民主主義は、独自の特質を有している」。
例えば、国際組織アムネスティ・インターナショナルの情報によると、韓国では、国家安全保障に関する法律の曖昧な文言が、特に北朝鮮に関する政策など、政府の活動を批判しているとされる特定の個人やグループを監視するために利用されているという。SNSでは、北朝鮮問題などの複雑な問題を議論する利用者たちが刑事事件の対象となり、裁判で訴えられることが増えている。
政府の政策に不満を持つ労働組合の代表者たちが集会を開き、警官と衝突する事件が発生した後、保守政党「セヌリ」党は、集会やデモにおける覆面の着用を禁止する法案の成立を目指す意向を表した。一方で最大野党の「新政治民主連合」は、このような法律が、反対意見を持つ人々を取り締まるための国の情報機関の「束縛を解く」可能性があるとして懸念を表している。朴大統領は、「暴力的な抗議行動の根絶」を呼びかけている。朴大統領によると、テロ組織「IS(イスラム国)」との戦いが強まっている今、テロリストが違法集会で参加者の中に入り込み、韓国市民に脅威を与える恐れがあるという。一方でストレリツォフ氏は、朴大統領の呼びかけの理由は別のものだとの見方を示し、次のように語っている-
「この呼びかけは、恐らくISとは関係がないだろう。恐らく、韓国国内の政治争いや、朴大統領の政策への不満と関係があるのではないだろうか。
一方で世界では今、シリア危機とISとの戦いに関心が向けられている。そのため朴大統領が提案するISの脅威に対する対策は、韓国社会から理解をもって受け止められるだろう」。
韓国は国際的なテロとの戦い、および難民問題の解決に貢献する用意がある。しかしストレリツォフ氏は、地政学的な理由から、韓国に大量の難民が流れ込むとは考えづらいと述べ、次のように語っている-
「もしかしたら難民は数百人、あるいはもっと少ないかもしれない。これは韓国にとって大したことではない。韓国は難民に対して寛容だ。韓国ではたくさんの民族が暮らしている。北朝鮮からの難民を含む、他の国からやってきた朝鮮人もいる。すなわち韓国ではすでに難民の受け入れと、彼らが韓国社会に適応するための一定のメカニズムがつくられている」。
なおストレリツォフ氏は、韓国だけでなく東アジア全体における難民の完全な同化、適応は、恐らく不可能ではないかとの見方を示している。その理由は寛容性のなさではなく、文化や文明的な違いだ。また、例えば日本社会ほどではないとはいえ、韓国社会は均質的だ。
なお韓国は、ISが発表したテロの標的とされる60カ国に入っている。またISの新たな動画では、日本と中国も標的とされている。