米国の古くからの信頼関係で結ばれた同盟国、タイが、主要超大国間でバランスをとる政策に、ついに入った。しかも近年、軍事当局の方針では、タイはむしろ中国とより緊密な協力を行なうようになっている。
地域のより小さな国、たとえばカンボジアやラオスに対する中国の強大極まる影響とならんで、いま中国はASEANのより大きく影響力のある国をも自陣営に引き込む能力があることを示している。合同演習はとりわけ示唆的だ。何しろそれは、中国が将来も米国にかわって地域の安定と安全の主要な保証人としてのサービスを続ける潜在的用意があることを示しているのだから。中国の軍事力は複数の方向性で、既に太平洋西部に常駐する米国の潜在力を超えている。
将来的に軍事力のバランスはさらに米国に不利なほうに傾きそうだ。
軍事的優位、およびソフトパワー部門における圧倒的優位が、なお米国には最重要な長所として残っている。しかし軍事的優位は一貫して下がっていくし、「ソフトな」パワーも米国自身の外交によって崩壊していっている。その政策も、目指す方向も、米国のアジアの同盟諸国には、ますます分かりにくくなってきている。
米国が米国的価値観を侵略的に輸出し、外国の内政に干渉することに熱心なことにより、米国の古くからの友人たちが、米国に危機感をもって対するようになっている。30年にわたり米国の忠実な友人だったエジプト大統領ホスニ・ムバラク氏が、のちに米国の支援によって追い落とされたことは、世界中の米国のパートナー諸国に教訓を与えた。この教訓は注目されないではいなかった。
中国の台頭は、タイのようなより小ぶりな国にとっては、政治的策動の新たなチャンスである。米国の深刻な過ちにより、多くの政府が中国に訴えかけ、中国を世界政治における主要な「安全保障の守り手」として期待するようになっている。外国における大型演習では、技術・軍事的観点から、中国が既に多くの点でその役割を担う用意があることが示されている。