会談の詳細については、公開されていない。しかしスプートニク日本記者が意見を求めた専門家らは皆、日中関係の政治的温暖化が、両首脳間の意見交換を促した主要な動機になったと見ている。ここでまず、ロシア極東研究所の専門家、ワレーリイ・キスタノフ氏の見解を御紹介したい―
「パリでは、基本的に、気候温暖化問題についてはそれほど話し合われなかった。なぜなら双方の立場はすでに、公けにされていたからだ。パリでは恐らく、現在かなり緊張している二国間問題が話されたと思われる。日本は、東シナ海でも又南シナ海でも、中国海軍の活動が活発化している事を大変憂慮している。そうした中国の行動を、日本は自分達の海上貿易路に対する脅威とみなしているからだ。一方中国は、日本を、フィリピンとベトナムを筆頭に一連の国々をかき集め反中国戦線を組織し、南シナ海の緊張を煽っていると非難している。また中国政府は、米国が中国を抑え込むために、益々日本を利用している事に、極めて神経を尖らせている。緊張は増大し、その事は当然ながら、日中の指導者を心配させないわけにはいかない。そうした事を背景に、習国家主席と安倍首相はパリで、こうした状況の中、今後両国はどう生きてゆくべきか、二国間関係の緊張を緩和させるためには何をする必要があるのかについて、話し合ったのだと思う。」
その一方で、ここ数か月、日中の政治関係は、やはり若干の温暖化が見られた。11月の初めソウルでの日中韓首脳会談で、安倍首相と李克強首相との会談が行われたし、その少し後の11月末、クアラルンプールでのアセアン・サミットの場では、李克強首相が、ここ数年間では初めて日中関係改善に言及、その一方で「そうした傾向はまだかなり脆弱だ」とも指摘した。
ロシア東洋学研究所のエキスパート、エルゲナ・モロヂャコワ氏は「パリでの安倍・習会談は、日中関係に見られる傾向を強めた」と見ている―
「全体として、ここ最近行われた会談全ては、重要なものだ。とても小さいが、それでも一定の前進がある。私はこの事に、大きな希望を持っている。この地域の状況は、大変複雑だ。アジアにおいて日本は経済的に、大変積極的に前へと進んでいる。中国も、大変強力だ。中国がどこかの国に資金を出すと、今度は日本が、その国に、私達はもっと多くの資金を提供しましょうと提案する、といった状況である。ここでは、経済的利益が大きくもつれている。そうした衝突は、双方に損失をもたらしている。経済協力への関心は、両国を友人にし、経済がすべての下に置かれる。経済における合意を通してのみ、日中はさらなる前進が可能なのだ。
一方米国は、全力でそれを許さないよう努めるだろう。日本は、手と足を米国に縛られており、残念ながら何もできない。それゆえ、日中の経済的接近に向けた動きは、米国の妨害に会い、成功したりしなかったりしながら不安定に進んでいくことになるだろう。」
経済における温暖化に向けたシグナルの一つになったのが、2009年以来6年ぶりに、11月4日に行われた李克強首相と約200名からなる日本の財界代表団との会談だった。現在双方は、経済発展を担当する副大臣レベルでの会合を準備している。そうした会合は、今月12月北京で行われ、それは、2010年8月以来初めてとなる経済発展担当大臣会合のための「たたき台」になるに違いない。