いっぽうのロシアも原発の輸出には積極的だ。ロシア国営原子力企業・ロスアトムは中国やインド等と大口契約を締結済で、新興国での売り上げを伸ばしている。両国はライバルに見えるが、協力できる部分も多い。日露原子力協定は、2012年5月に発効されている。前国際エネルギー機関(IEA)事務局長で、エネルギー問題に詳しい田中伸男氏(笹川平和財団理事長)に今後の原子力分野での日露協力の可能性についてお話を伺った。
ロシアの場合は途上国に技術提供、輸出をしています。日本もやはり同じように、これから途上国が原子力発電を行うにあたって原子炉を輸出しようと考えています。日本がロシアと協力して原子力の平和的な利用、核兵器にしないような形での技術移転を考えるのは十分あり得る話です。それから安全の問題は、途上国で原子力発電を行う場合に最も重要な要素のひとつです。更に、原子力を利用すると核のゴミが出てきます。高レベル廃棄物の処理、または使用済み燃料の処理というのは原子力発電をやる以上、どうしても必要になってきます。途上国が原子力を使った場合に廃棄物・使用済み燃料をどう処理すればよいかという答えがないと、推進することはできないわけです。この点ロシアは再処理の技術を持っていますし、日本にも再処理と高速炉の技術があります。高速炉についてはロシアでも非常に研究されています。そういう新しい、より持続可能性のある原子力技術の研究がなされていくでしょう。
私はアメリカがかつて開発した技術『統合型高速炉』の推進を提案していますが、ロシアにもそのような持続可能な技術というのは当然あるだろうと思われます。それらについて日露で協力して、これからの世界の原子力モデルを作っていくことが考えられます。」
折りしも先日、ロスアトムは東京で初のワークショップを開催し、日本の原子力関係者に自社のバックエンド技術をアピールする機会を得た。具体的なプロジェクトが今後、日露間で進んでいくことが期待できる。