民間航空機の輸出は、米国の収入の大きな柱である。年間輸出額は約1390億ドルだが、中国は、その10%を占めている。一方中国は、積極的に自国の中距離及び小型航空機の生産を発展させている。ロシア科学アカデミー極東研究所のエキスパート、アレクサンドル・ラリン氏は、国産機に対する付加価値税の免除について「国内の航空機製造業を守り、自国の経済的利益を擁護するものだ」と見ている。
ラリン氏の見解を、次にお伝えしたい-
一方、米国の労働組合は、この大型契約がなされた後、中国国内にボーイング737型機のための組み立て工場を建設する事について、中国側とボーイング社の合意締結を許したとして、オバマ大統領を批判した。中国では、キャビンの組み立てと塗装がなされる事になるが、そうなれば米国人従業員の働く場が失われてしまうからだ。
この三年、WTOは、米国及びEUと中国の間の争い、30件以上を扱った。品目を具体的に挙げれば、スチール製品、太陽電池そして希少金属といった具合だ。米国やEUは、ダンピングをしているとか保護主義的だとして中国を非難してきた。両者は、WTOの仲裁裁判所での解決を決め、国際関係に深刻な暗雲が立ち込めたが、結局、妥協が成立した。
極東研究所のエキスパート、アレクサンドル・ラリン氏は「WTOにおける貿易戦争は、中国の経済的地位が向上した結果であり、ライバルによる、中国抑え込みの試みだ」と指摘し、次のように続けた-
「中国の経済的重みが増している。彼らは、貿易経済関係において、ますます積極的かつ自主的に行動している。これは、中国のライバル国にとっては気に入らない。WTOでの争いは、裁判上も、また中国の国益上でも解決を見たが、自主的な行動を目指す中国の意向は、ますます明白に示されている。現在、米国と中国がアジア太平洋地域で作っている2つの強力な貿易経済フォーマットの間で、競争が始まると見られている。一つは、環太平洋パートナーシップ(TPP)であり、もう一つは地域包括的経済連携(RCEP)だ。こうしたフォーマットの裏には、経済空間ばかりでなく、地政学的影響力拡大をも目指す米中間の争いが、明らかに見え隠れしている。」
専門家達は、アジア太平洋地域に自由経済ゾーンが作られても、TPP参加国があらかじめ決めたあらゆる関税や税金が、WTOのルールに合致する事はないと見ている。つまり、WTOの枠内で、米中間も含め、苦情や争いのために新しいフィールドが作られるという事である。