防衛研究所・兵頭氏「日露関係に好ましい状況は少しずつ生まれている」

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パリ同時多発テロを受け、ロシア・欧米諸国が協力してテロとの戦いに臨むという流れができたのも束の間、先月24日のトルコによるロシア軍機撃墜は、協調機運に水を差した。日本のメディアの報道には、「ロシア機はトルコ領空を侵犯したのだから、撃墜されても仕方がなかった」という論調が見られるが、事はそう単純ではない。

ギリシャ軍参謀本部によれば、ロシア機が撃墜される直前まで、トルコは一日に50回以上ギリシャ領空を侵犯していた。そのような国が、純粋に領空侵犯だけを理由に攻撃をするとは考えにくい。エルドアン大統領自身、2012年にトルコ軍の戦闘機がシリアの領空を侵犯して撃墜された際、「短時間の侵犯は迎撃の理由にならない」とシリア政府を非難していた。

この点でロシアと日本の報道は大きく食い違っている。このことが日本における反ロシア的な見方を強め、好転しかけていた日露関係に悪影響を及ぼすのではないだろうか。トルコによるロシア軍機撃墜事件後の日露関係について、ロシア政治に詳しい兵頭慎治氏(防衛省防衛研究所・地域研究部長)の見方を伺った。

兵頭氏「日本国内に、ウクライナ・シリア問題において、ロシアの対外強硬路線を心配する声があるのは事実です。しかし、ロシアに対する懸念や批判は、欧米諸国、特に米国に比べて限定的であり、ウクライナ危機の際、日本は欧米諸国と同様にロシアに経済制裁を加えましたが、その中身は比較的ゆるやかでした。日本からすれば地理的に遠く離れた場所で起こっている出来事でもあり、プーチン大統領の訪日によって日露関係を強化し、北方領土問題の早期解決を目指したい、という意見は根強く日本国内に存在します。

ロシアとトルコの関係悪化は非常に懸念されるところですが、実は、プーチン大統領が提唱している対IS大連携の流れは強まっていると思います。パリのテロ事件後、オランド仏大統領はプーチン大統領と会談し、ロシアと連携して対テロ作戦を行う決断をしました。続いてイギリスもシリア空爆に踏みきり、ドイツも後方支援という形で対テロ作戦に関わっています。ウクライナ問題で欧米とロシアの関係は悪化しましたが、今はテロという共通の脅威に基づき関係改善の動きが見え始めています。これにアメリカが加わる形で、欧米とロシアが歩み寄るという関係改善の流れができていけば、プーチン大統領の訪日など日露関係の強化が進めやすくなります。

ロシアとトルコは互いに非難合戦を続けていますが、これが対IS大連携に影響を与えることはロシア自身も望んでいないでしょう。日本は、シリアにおける対ISの共同テロ対策がどの程度進展していくのかに注目すべきだと思います。なぜなら、シリアをめぐる欧米とロシアの関係は、実は日露関係やプーチン大統領の訪日に直接的な影響を与えているからです。以前の日露関係はグローバルな国際政治の影響をあまり受けないという特徴がありましたが、ウクライナ危機以降、そうではなくなりました。私は、全体的に言えば、欧米とロシアがテロ問題で歩み寄る傾向が強まっていると見ています。この意味においては、日露関係にとって好ましい状況が、少しずつではありますが、生まれていると考えています。」



 

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