同評論員は以下のように記している。
2006年、イラクのサマラで、ダーイシュの先駆をなす戦闘員らが、シーア派の聖地を爆破した。死者は出なかったが、これにより、イラクで多数を占めるシーア派は、スンニ派への報復をはじめた。宗教的土壌の殺人が多数起きた。そうしてイラクの社会的「繊維」が永久に断ち切られてしまったのである。結果的に、スンニ派は、自分たちを守ってくれるのはダーイシュだけだ、と考えるようになった。2014年6月に比較的少人数の武装グループが150万の人口を誇るイラク第2の都市モスルを掌握できた理由はそこにある。
いまダーイシュはこの戦略を西側で適用しようとしている。その一例がパリ連続テロや、サンベルナルディノにおける銃乱射事件だ。
ダーイシュの目的は明らかだ。西側社会に、欧米に暮らす何百万人ものムスリムに対する無差別憎悪を植え付けることだ。もし憎悪を煽り立てることに成功したなら、ムスリムとその国籍国・居住国との絆が断ち切れ、イラクのスンニ派で起こったことと同様、ダーイシュの声明にある通り、ダーイシュこそがムスリムの唯一の守り手、ということになってしまう。