この記念イベントは今年の露日関係の総括を行うためのものだった。ロシア日本学者協会の代表でモスクワ国際関係大学で教鞭をとるドミトリー・ストレリツォフ教授は、全体的には二国関係は楽観的な結果を出したとの考えを持っている。ストレリツォフ氏は、露日関係の将来的発展において、日本が対露制裁や、あからさまに米国のプロジェクトであるTPPに加わらざるを得なくなったという事実は阻害要因にはならないとの見方を示している。
ストレリツォフ氏は、ロシア孤立政策がうまく機能していないのは今もう明らかだと指摘している。このため、プーチン氏と安倍氏のように、支持を得た、決断力のあるふたりのリーダーが露日の二国間関係に新たな弾みを与えることが出来ると期待をかけることができる。だがこの記念パーティーで、それよりも長い期間についての総括となったのは、待望の露日共著、『日ロ関係史 パラレル・ヒストリーの挑戦』(東京大学出版会)の出版だった。この編集作業には露日のおよそ40人の歴史家たちが参加した。ストレリツォフ氏は、日中、日韓で同様な共同作業の試みが行われたものの、日中関係、日韓関係に横たわる複雑な問題への評価を巡って双方の意見の相違を克服できずに、失敗に終わったと指摘している。この露日のプロジェクトについても同様の危惧感は語られたものの、ストレリツォフ氏いわく、露日間の国境線画定や1918年~1922年のロシア極東への日本軍侵攻などのような複雑な問題においてさえも、この著書に取り組んだ露日の歴史家らは客観的かつ政治的ではないアプローチを見事に示すことができた。
政治化を間逃れることのできるこうした能力や、今日本やロシアで見られる二国間経済協力への関心の高まりは、2016年には露日関係の拡大で新たな段階が開かれるのではないかという期待を抱かせてくれている。