ダイオウイカ(Architeuthis dux)は、世界の海洋の深海に生息し、成長すると体長が16メートルにも達する。魚や小さなイカなどを常食とし、彼らを脅かすのはマッコウクジラぐらいだ。これまで何百年もの間、ダイオウイカの死体が、岸辺に流れ着いたり、漁師の網にかかったりしたことはあったが、生きているこの巨大イカをカメラに収めることは長らくできなかった。初めて撮影に成功したのは、やっと2004年のことだった。さらに2012年には、特別の罠を仕掛け、それを使って学者達が、ビデオで撮影している。
しかし今回、富山では、これまで見られなかったほどの至近距離で、ダイオウイカをビデオ撮影することができ、大きな話題となっている。まして人間が、この巨大イカの直ぐ近くを泳ぎながら撮影したのだからなおさらだ。そうしたリスクを省みず、ダイオウイカを水中カメラに収めたのは「ダイビングショップ海遊」を経営する木村昭信さんだった。木村さんは、イカに自分の存在を気付かれないよう慎重に近づいたという。
木村さんは、CNNテレビのインタビューに応じた中でー「恐怖よりも好奇心の方が先に立ち、海に飛び込んで接近した。イカの体に傷などはなく元気そうな様子で、墨を噴き出したり、私の体に足を巻き付けようとしたりした。私は、イカが沖に戻れるよう助けた。発見した水域から数百メートル、イカを沖へと導いた。そのうちイカは深海に姿を消した」と語った。