1年の任期でキエフに派遣されるのは、日銀出身の専門家、田中克(まさる)氏。金融制度改革の支援に当たる。
ウクライナ政府は日本を含む多くの国から多額の財政支援を受け取っている。ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所アジア太平洋研究室のクリスティナ・ヴォダ氏は次のように語る。
田中氏は不良債権、すなわち返済が遅れ、または返済の見込みのとぼしい企業または個人向け債権の問題に銀行が取り組むことを補助する。しかし、田中氏がウクライナに渡った目的はほかにもあるだろう。日本の貸し手たちは、ウクライナ当局が日本から受け取った資金を合理的に配分しているかどうか確認しようとしているのだ。ヴォダ氏はそう語る。
「2014年の危機後日本がウクライナに与えた資金は相当多額で、20億ドルにも上っている。先行する20年間の支援額が10億ドルちょっとだった。むろん日本は、この多額の金銭が、効率的に、何よりきちんと根拠をもって使われていてほしい。つまり日本政府は、納税者を念頭に、金銭の使途を把握しておきたいと願っているのである。周知のように、日本では、首相がかなり自由に予算を分配し、予算の使い道について優先順位を定めることができる。ただし、予算そのものは議会の承認が必要だ。よって、何らかの非効率な、目的外の資金使用が問題になったとき、納税者の間に大きな不満が起こる可能性がある。そして政府の活動を討議する議論が巻き起こる。こうした事態を避けるためにこそ、ウクライナの金融制度を監視する必要が出てきたのではないか」
ウクライナは西側から緊急支援を取り付けながら、また、EUとの統合を目指す路線をとりながら、汚職を克服できず、金融部門に秩序をもたらすことができていない。日銀元職員がこうした問題の解決を助けられるものだろうか?興味深い。