この4カ国に南アフリカを加えた5カ国はBRICSのメンバーで、その議決権比率は全部で14,7%となる。この割合は、IMFが今後極めて重要な決定を下す際、5カ国が事実上それを阻止できることを意味している。BRICSが持つ比率は「決定を否決するのには15%以上を必要とする」IMFの規定にはわずかに届かないが、イランやベネズエラなど、他の多くの国々がしばしばBRICS諸国に連帯する事から見て、特に必要な場合には、米国やその同盟国が押し付けてくる決定を葬るのに特別な努力をしないで済むだろう。
改革には、5年以上の長い歳月がかかった。なぜなら米国やその近しいパートナー国、日本やドイツ、フランス、イタリアそして英国の強い抵抗に会ったからだ。これらの国々は皆、IMFの出資国上位10カ国に入っていた。ロシア外務省外交アカデミーの専門家、アンドレイ・ヴォロディン氏は「IMFの議決権の比率を変える事は、すでに大分以前から、その機が熟していた」と考えている―
IMFにおける議決権の見直しが実際生じたのは、昨年11月30日に、人民元がIMFの通貨バスケットに含まれた、そのすぐあとだった。ここ15年間、通貨バスケットには、ドル、ユーロ、ポンドそして円の4つの通貨が入っていた。そこに人民元が加わり、IMFは事実上、この通貨を世界の新しい準備通貨として認めたのだった。
中国との競争により、米国は、長期にわたりIMF改革にブレーキをかけ続けた。しかし米国の要望で、IMFが新しい決定メカニズムの改革を遅らせている間に、中国は、アジア・インフラ投資銀行設立を提案し、短期間でそれを立ち上げてしまった。そして世界57の国々が参加するこの新しい機構を、一連の専門家らは「IMFキラー」と呼んだ。また同時にBRICS開発銀行も形成されようとしている。
ロシア外交アカデミーの専門家アンドレイ・ヴォロディン氏は、こうした新しい金融センターの設立とIMFの大規模な改革との間に、直接的な関係があると見ている。アジア・インフラ投資銀行もBRICS開発銀行も、世界における資金の分配や流れにおいて自分達にとって不公平な状態を終わらせたいとする新興国や途上国の意向を反映したものだからである。
ヴォロディン氏は、次のように指摘している―
「自分達に取って代わる金融センターが、世界の金融システムの中に現れた事が、IMFの今回の歴史的な決定において大変大きな役割を果たした。実際アジア・インフラ投資銀行やBRICS開発銀行、そして中国やロシアの経済的地理的プロジェクトが、世界経済のみならず世界政治においても、ますます重要な役割を演じ始めたている。困難を伴いながらではあるが、徐々に、多極的世界の形成が行われている。」
割り当ての再分配は、IMF改革の最後の課題ではない。IMF指導部も、その事を理解している。IMFのクリスティーナ・ラガルド専務理事は、次のように述べた―
「私は、この本質的に歴史的な改革を批准してくれた我らのメンバーの判断を歓迎する。改革は、この急速に変化するグローバルな状況の中で、IMFに、自分達のメンバーをさらに満足させ、必要なものを供給する可能性を与える。重要な前進がなされた。しかしこれが変革の終わりではない。IMFの管理システムの強化に向けた我々の努力は、さらに続けられるだろう。」