この問いについて、モスクワ国際関係大学国際問題研究所の上級学術専門家、アンドレイ・イヴァノフ氏は次のような考察を表している。
このプロジェクトの有益性について多少の疑問はのこる。例えばベトナム。この国の指導部は新たな「金持ちクラブ」に加わることで自尊心がくすぐられてはいるようだが、懐疑派はTPP加盟国の市場がベトナム産の食糧品に開放される一方で、TPPの規則への遵守義務からベトナム経済では打撃を受ける産業部門も出てくるのではないかと危ぶんでいる。こうした懸念が表されているのはEUの例があるからだ。欧州ではEUの要請によって一連の国で数千社が廃業に追い込まれた。競争率を下げるというのがその理由だった。 さらに、TPPが今後どうなっていくのか不確定なファクターがもうひとつある。それはTPPの主導国である米国で、TPPの創設は、加盟国間の貿易経済関係を簡略化することなのか、それとも伸張する中国の影響力に対抗するためなのか、その主たる目的が未だに理解されていないということだ。
まさにこれが理由で中国でもTPPにどう対処すべきかが決められずにいる。中国商務部の声明ではTPPの合意内容の検討作業は行われている。だが同時に「中国は、地域の自由貿易圏の合意がハイレベルの透明性、開示性、内容性で抜きん出ている場合、それへの参加を積極的に続けていく」という声明ではっきりとした立場を打ち出している。中国はこうした声明を出すことで、仮に自分がTPPに寄り添うことは得策ではないと判断した場合も、アジア太平洋地域における経済統合プロセスから自国が外れる危険性を間逃れたいという期待を表している。もうひとつ中国の慎重な態度を煽っているのは日本が台湾に対してTPP加盟を呼びかけていることだ。
ロシアではTPP合意締結のニュースは平静に受け止められている。「ロシア24」テレビに対し、経済発展省のヴォスクレセンスキー次官は、TPPが創設されたところで、これがロシアと新地域統合参加諸国、ましてはアジア太平洋地域全体との貿易関係に深刻な影響を及ぼすことはないと語った。ヴォスクレセンスキー次官はこう語る一方で、将来的には「多くの国の企業は、特に非原材料商品を取引する場合は、新たな規則に合わせざるを得なくなるだろう」との認識を表している。