ゴンチャロフ製菓の歴史は、1923年(大正12年)にロシア人のマカロフ・ゴンチャロフ氏が神戸・北野町で製造・販売を始めたことから始まっている。同社は神戸では知らぬ人のない製菓メーカーだ。ゴンチャロフ氏はロマノフ王朝の宮廷菓子職人として働いていたが、ロシア革命に揺れる祖国を後にし、神戸に居を構えた。
それまで日本ではチョコレートと言えば板チョコであったが、ゴンチャロフ氏はロマノフ王朝から受け継がれた精神と伝統技術をもとに、日本で初めて「ファンシーチョコレート」を製造したと言われている。ファンシーチョコレートとは、一口サイズのチョコレートの中にガナッシュやジャム、酒等が入っているものの総称だ。今では定番となった「ウイスキーボンボン」も、ファンシーチョコレートの一種で、同社の看板商品となっている。当時は原料の仕入れも高く、ファンシーチョコレートは大変な高級品であったそうだが、新しいものが好きな神戸人に受け入れられ、広まっていった。ゴンチャロフ氏の工場でチョコレートづくりに関わることは、神戸の人にとって一種のステイタスだったとも言われている。
高級チョコレートメーカーがなぜキャラクターを採用することにしたのか。ゴンチャロフ製菓・企画部の担当者は、チェブラーシカとのコラボレーションのきっかけについて次のように語っている。
「キャラクターとのコラボレーションはバレンタインの時期限定です。2年前、バレンタイン商戦の新しい取り組みとして、人気キャラクターとコラボレーションしてみようという案が出ました。当時、当社のように百貨店に出店しているブランドがキャラクターとコラボするという例はほとんどありませんでしたから、社内でも『それはお客様の支持を得られないのでは』という声もありました。しかし杞憂に終わり、大変ご好評をいただきました。キャラクターとのコラボがお客様の支持を集めましたので、昨年もコラボをすることにしました。バレンタインというのは女性にとって一年に一回のお祭りです。チョコレートも男性にあげるものではなく、自分や友達用に買うものに変わってきています。お客様は常に新しいものを求めているので、キャラクターも新しいものを使いたいと思いました。そこで、ちょうど日本で映画公開されたこともあり、チェブラーシカを採用することになりました。当社の創業の祖であるマカロフ・ゴンチャロフ氏はロシア人ですし、チェブラーシカはロシア(ソ連)のキャラクターですから。
チェブラーシカはサルでもクマでもないふしぎな生き物で、知名度がどこまであるのかな?と少し不安なところはありましたが、実際のところ、とても人気がありました。チェブラーシカを知らなかった人も、その可愛さから、お買い求め頂いたようです。大変好評をいただき、バレンタイン当日を待たずに途中でなくなりました。」
今年のチェブラーシカのチョコレートは、チェブラーシカがオレンジの箱の中で眠っているデザインなど、全8種類。おいしさと可愛さを同時に堪能できる。