中国は2012年からこの演習ではオブザーバーの立場をとりはじめた。そして2年後の2014年には完全に同等な立場で演習への参加を許されていた。今年、演習における中国の地位が変化したことについて、観測筋の間からは、タイとの関係強化のためのフィールドを米国が中国に与えたくなかったことに起因するのではないかとの声が上げられている。中国とインドが今回の演習の主要メンバーではないことはこの2国を抑止しようとする米国の戦略に十分合致している。その一方で中印は互いに軍事コンタクトを行なうための新たなフィールドを見事に開拓している。
8日、インド軍報道官のゴスヴァミ大佐は、2月6日インドと中国の国境警備部隊がインド北部ジャンムー・カシミール州 の中国と国境を接するチュシュル・モルド地区において初の合同軍事演習を行なったことを明らかにした。この演習には双方から30人ずつ軍人が参加し、合同作戦の策定を行なっている。演習の行なわれたチュシュル地区とは1962年、中印国境紛争の際にインドが使用した滑走路があることであまりにも有名になってしまった場所だ。
ロシア人政治学者のウラジーミル・エヴセーエフ氏は国境における初の軍事演習は多くの面で中国とインドの間の信頼強化を反映しているとの見方を示し、次のように語っている。
「中国とインドの両軍が双方が紛争を抱える国境付近で合同演習を行うというのはこの問題を調整する上での妥協の模索に一歩踏み出したということだ。これは上海協力機構の枠内で見られるプロセスと一致しており、インドにもパキスタンにも上海協力機構の完全なメンバーになることを許すものだ。」
中国の習国家主席、インドのモディ首相は2014年秋、2015年春に互いに訪問を行ったなかで、国境問題の解決に対し、プログマティックかつ柔軟に対応をとるところをアピールしている。ロシア科学アカデミー東洋学研究所の専門家、タチヤナ・シャウミャン氏は国境で行われる初の演習は、領土論争が両国関係に及ぼす悪影響を出来るだけ少なくしたいという双方の意気込みを反映したものとの見方を示し、次のように語っている。
「これは明らかに、国境問題の解決に何らかのアプローチの模索が図れるというデモンストレーションだ。中国もインドも国境の紛争拡大を許さず、逆に合同軍事演習といった新たな方法で国境紛争地区の安定化を図る可能性を有している。これは双方が前向きな歩みを行なっている証拠だ。」
中国とインドは多極的世界を支持している。また習国家主席もモディ首相も、今、世界に形成されつつある西側のものではない、新たな極のイメージは多くは中印関係がどういう動きを見せるかにかかっていることを明確に理解している。このため中印が相互の諸問題の解決を斬新な方法で図ろうとすることは、多くはこのコンテキストに合致する。