一次試験は筆記試験で、専門言語の知識のほか日本の地理と歴史、一般常識が問われる。筆記試験では、言語区分を問わず8割以上の受験者が脱落しており、突破の鍵は一次試験にあるといえる。二次試験は試験官が観光客役となり、実践的なガイドとしてのコミュニケーション能力が問われる。
一般社団法人・日本観光通訳協会の金子昭紀(かねこ・あきのり)事務局長によると、同協会の会員(通訳案内士の有資格者が任意で会員となる)730名のうち、ロシア語の通訳案内士は13名だという。日本観光通訳協会は、試験合格者に対し様々な研修を行い、新人の通訳案内士が協会の活動・研修を通して一人立ちができるようにバックアップを行っている。
ロシアからの旅行者数は絶対数で言えば少ないが、通訳案内士をを必要とするような富裕層の訪日は伸びており、それが多くのオファーにつながっている。東京、箱根、鎌倉、日光、京都、大阪、奈良などの定番観光地が人気だ。
通訳案内士には高いスキルが要求される。例えば日光と一口に言っても、日光のどこを案内すればいいのか、どの順番で名所を回るのがベスト・ルートなのか、日本特有の事象や感覚をどのように表現すればいいのか、答えはない。新人案内士たちは他の案内士のやり方を参考にしたり、一人で何度も名所をまわって自分なりのルートを組んだりと、研鑽を積んでいる。金子氏は、通訳案内士が、ショッピングや日本食だけが日本の魅力ではないことを伝える役目を果たしてほしいと願っている。
金子氏「名所旧跡だけではなく、日本人の考え方も含めて日本の魅力をお伝えするのは簡単ではありません。通訳案内士の役目は、外国からの観光客に日本について理解を深めてもらうことです。東京五輪も近づき、通訳案内士のニーズが高まってくることは間違いありませんが、重要なのは東京五輪の後だと思います。五輪の後5年、10年たっても、更に日本の良さ、日本への理解が深まってくることを期待しています。」
通訳案内士の資格をもち都道府県に登録している人は昨年4月時点で全国に約19000人いるが、全員が通訳ガイドとして働いているわけではない。言語によっては仕事がない。その一方で中国・韓国から増加する観光客に対して両言語の案内士の数が少ないなど、ミスマッチが起きている。規制改革会議では、国家資格がなくても有料でガイドができるようにする規制緩和を提唱する声もあるが、具体案はまだまとまっていない。