ロシアを代表する日本学者で、駐日ロシア大使を務めた経験のあるアレクサンドル・パノフ氏は、スプートニク日本の取材に対し「現在、日本経済の状況は、これまでなかったほどに世界経済と結びついている」と指摘し、次のように続けた-
「アベノミクスと言われるプログラムの措置がとられているにもかかわらず、またトヨタあるいはソニーといったいくつかの企業が、収益を伸ばしているにもかかわらず、日本経済の状況は、かなり複雑で困難だ。日本経済は、世界経済全体が経験しているのと同じ困難の中にある。危機は、中国を含め、世界の主要国すべてを包み込んだ。欧州の状況は、彼らが決めた対ロシア制裁により、悪化している。日本にとっても、それは対岸の火事ではない。現在、世界経済が今後どうなって行くのか、想像するのは難しい。しかし少なくとも今年は、日本経済も含め、困難な一年になるに違いない。」
このように指摘したパノフ氏は、さらに「日本政府には危機克服のための具体策がないし、それを持ちえない。なぜなら純粋に国内的措置によって、世界的なプロセスと深く結びついた状況を正す事など、実際上出来ないからだ」との見方を示した。しかし、パノフ氏は「安倍首相の野心的な経済成長プランが、この先実現しないとしても、それにより、首相の立場がひどく弱まる」とは考えていない。
次に、スプートニク日本記者は、モスクワ国際関係大学のドミトリイ・ストレリツォフ教授に意見を求めた。教授も「状況を、余り大げさに受け止めるべきではない」と考えている-
「もちろん、日本の経済状態は、一様ではない。一方では、円高が、輸出企業に打撃を与えている。おまけに、デフレの抑制策もうまく行っていない。しかし他方では、日本経済を前進させるシステム上の要因がある。それは資源価格が安くなっている事で、それに関連して、国家予算の収支バランスが改善している。世界経済においてポジティブな傾向が優勢である事もそうだ。国内市場の状況も、そう落胆すべきものではない。リストラのプロセスが続いている。国内需要は、急速なテンポで伸びているとは言えないが、下がってはいない。
こうした事を背景に、安倍内閣の政治的展望を判断するなら、まず今年、参議院選挙を控えている事を考慮する必要がある。その際、衆参同時選挙が行われるのではないかとの噂も執拗にささやかれている。安倍首相自身は、議会を解散するつもりはないと言明しているが、衆参同時選挙というシナリオは有り得ると思う。なぜなら、それは政府に、所謂『エアバッグ』を与えることになるからだ。首相にとっては、今衆議院選挙を実施した方が得だ。というのは来年2017年には、消費税値上げを控えているからだ。また2018年には、安倍氏の首相及び自民党総裁としての任期も切れてしまう。それゆえ、来年、再来年の衆議院選挙の実施は、安倍氏にとっては得策ではない。そうした事から、やはり今年となるわけだ。経済の容易でない状況を考えても、今年選挙に踏み切れば、自由民主党は、決定的な勝利を収めるだろう。なぜなら、野党が再編され、自民党に対抗してまとまる、いかなる兆候も見られないからだ。また野党第一党の民主党は、相変わらず、自民党批判だけで、前向きな選挙公約を掲げておらず、支持率もこれまで同様低く、一桁台を低迷している。」