こうした状況について、ロシア極東研究所のコリア問題の専門家、アレクサンドル・ヴォロンツォフ氏は「こうした南北朝鮮間の言葉による相手への威嚇は、すでに大分前から伝統のようになっているが、今年は、何か新しいものが見られるようだ」と指摘し、次のように続けた―
北朝鮮の威嚇的なレトリックについて言えば、それは多くの点で、韓国の一部議員らによる無責任な発言に対する反応である。例えば、韓国の与党セヌリ党のハ・テギョン議員などは、北の指導者金正恩氏の『物理的な排除』を公然と呼びかけている。事実上、こうした発言は、独立国でまた国連加盟国である国のリーダー殺害を公けに呼びかけるようなものだ。特殊な政治文化が力を持っている北朝鮮国内で、こうしたアピールが、特別強い怒りと激しい反応を呼び起こす事は、当然分かり切ったであり、我々が今耳にしているのが、まさにそうしたものなのだ。まして米国も韓国も、合同演習で、北朝鮮への、明らかに防衛目的でない攻撃のための訓練をする事を、隠していない。」
ここでスプートニク日本記者は、ヴォロンツォフ氏に「北朝鮮の側からの先制攻撃は、現実として有り得るのか、それとも単なる口先だけの脅しなのか?」彼の意見を聞いて見た―
「北朝鮮が、熱核実験と称した最近のものについて、ロシアを含めた核の専門家達は、疑いの目を向けたが、誰1人として、北朝鮮が実際、その核ミサイル開発プログラムにおいて進歩を成し遂げている事については、否定していない。それゆえ北朝鮮の潜在力については、過大評価も、又過小評価もしないことが正しい判断だ。北朝鮮当局は、実際すでに、自分達の通常ミサイルは、太平洋のグアム島にある米国最大の戦略基地まで到達する能力を持つと考えている。恐らく米軍は、この事をよく知っており、この問題に真剣に対応していると思う。
2013年、南北朝鮮関係がやはり尖鋭化した時も、米韓合同演習の際には、北から同じような脅迫的文言が浴びせられた。米国は、過度に騒ぐことなく、しかし非常に迅速にグアム島の自分達の基地の周囲に、追加の対ミサイル防衛システムを展開した。つまり米国は、北朝鮮の力を、完全に現実的脅威として、全く真剣に評価しているという事である。
今年になって、朝鮮半島をめぐる緊張は、急激に高まった。それゆえ、関係当事国すべては、自制を発揮しなくてはならない。半島での火遊びは、ますますもっと危険なものになりつつあるからである。」