国連安全保障理事会は北朝鮮の最近の核実験やミサイル発射に対し、北朝鮮に対する制裁を強化することを定めた、かつてないほど厳しい決議を採択した。ロシア、中国も制裁に賛成した。しかし、他ならぬ両国の努力のおかげで、厳しさと健全な理性との間のバランスを見つけることができた。東洋学者のアレクサンドル・ヴォロンツォフ氏はそう見る。
「ロシアと中国のアプローチは周知のものだ。ロシアの国連大使ヴィタリー・チュルキン氏も安全保障理事会で繰り返したように、北朝鮮に対する新たな制裁は、その核・ミサイル能力の開発を制限する必要があるが、経済の民間部門に影響を与え、生活水準の低下にはつながってはならない。だからこそ北朝鮮に対する新たな複合的制裁については、2ヶ月という、前例のない長い期間を使って合意がなされたのだ。先に米国と中国がある種の妥協にこぎつけたのだが、それがロシアには納得できないものだった。ロシアはさらなる努力により、広範な制裁を緩和しえたばかりか、朝鮮半島における自国の経済的権益を保護することに成功した。新しい制裁は、核ミサイル計画に関連していないところでの、北朝鮮とロシアの経済協力には影響しない。具体的には、制裁は北朝鮮のラジンにある底の深い、不凍の港には及ばない。ロシアは港に向けて鉄道54キロを敷設し、49年の年限で埠頭を租借し、港湾設備を近代的し、それを通じてロシアの商品を輸送し、海路によるアジア太平洋地域の各地への輸出につなげているのである。北朝鮮はこのプロジェクトにおけるロシアの完全なパートナーであるので、これで民間経済が維持されることになる。ロシアは客観的に北朝鮮経済の民間部門に影響を与える可能性のある一連の分野別制裁の軽減に成功している」
米国の国連常任代表サマンサ・パワー氏によれば、北朝鮮に対する厳しい経済制裁が新たに導入されたのにも関わらず、米国は北朝鮮が核開発計画を放棄することを期待していない。このことは驚くべきことだ。新たな制裁措置の本当の目的は何か。制裁のもつ戦略的な諸相について、ヴォロンツォフ氏は次のように述べた。
「米国は攻撃兵器やミサイル防衛システムTHAADを含め軍事ポテンシャルを地域に確立するためにこの危機を利用している。それらは第一に、ロシアと中国のミサイル防衛力を制限することを目標としている。北朝鮮のミサイル実験は朝鮮半島へのTHAAD配備の正当化を模索する米国を利しただけだ。北朝鮮の政権交代という目標ももちろん、隠しだてできない。したがって、新たな制裁に対する北朝鮮の反応も予測可能だ」
北朝鮮は新たな決議を米国からの圧力の下で採択された不当なものであるとして受け入れを拒否し、「主権を保護するのに必要な」ミサイルおよび核プログラムを継続するだろう、とヴォロンツォフ氏は述べている。