今回の拡大は18-20%の範囲になるものと推測できる。そしてもしそうなった場合、この数字は軍事改革始まって以来、最大となる。中国の軍事予算は1990年代末からGDP成長率に対しては平均でそれを上回る勢いで伸びてきたものの、それでも今回の伸びは異常に大きい。一連のマクロ経済的要因からおそらく予算拡大は鈍化するだろうことも考慮する必要がある。
定例となった軍事費拡大の原因となっているのは大規模な軍改革だ。たとえば2015年9月、習国家主席は中国人民解放軍の兵員数を30万人カットすると宣言しているが、これはつまり大量解雇者に対し、短期間にたがくの保障金の支払が余儀なくされることを意味する。2016年初頭、軍事行政のあらゆるシステムでラディカルな改革がスタートした。これによって一連の巨大なストラクチャーが排除され、それを基に新たなストラクチャーがつくられることになる。つまり大量の人員移動と新たにつくられるストラクチャーのための基礎作りに出費がかかることになる。
だが、だからといってこれらの要因だけで、これだけの軍事費拡大の理由を説明しつくされるわけではないが、中国政府側はまさにこうした要因に拡大の根拠を置こうとしているようだ。今中国がある軍事政治的状況は複雑化している。南シナ海の対立は高まり、米国との相互関係はより対立的になっている。中国政府がこうした状況で中国人民解放軍の一連の再軍備プログラムを早め、戦闘準備体制を強化しようと決めたと考えるほうが理にかなっている。
2015年、中国人民解放軍の活動はアジア太平洋地域でもその外においても新たなレベルへと出た。アフリカのジブチに初の常設の海外基地を取得した今、活動はこの先、先進、拡大するだろうことは予想できる。大陸間弾道ミサイルDF-41など一連の重要な兵器システムの大量生産、展開が近いうちにも始まることはほぼ間違いなく、これに加えて費用のかかるインフラへ追加出費も要されるだろう。それでも軍事費が国家予算を締め付ける割合は今のところ大したものではない。それに中国には軍事費拡大を行なえるだけの著しいストックがあるのだ。