伴氏「事故当時福島県内に在住していた18歳以下の子どもたち約36万人のうち、166名の子どもたちに甲状腺がん(悪性の疑い含む)が見つかっています。この有病数は、全国平均の数十倍も高い率です。チェルノブイリ事故の経過を考慮すると、今後この数が急増していくのではないかと危惧しています。
福島では事故直後に、『100ミリシーベルト以下の被ばくでは健康に影響はない』というような安全宣伝を専門家が住民に対して行っていました。そんなこともあって、子どもたちの親は被ばくや健康影響について、とても心配していましたが、その心配をなかなか口にできない雰囲気が生まれ、ストレスを抱えています。」
昨年10月には、岡山大学の津田敏秀教授が日本外国人特派員協会で会見し、福島県内で子どもたちの甲状腺がんが増えていることと、原発事故による被ばくとの因果関係を説明した。しかしこれについて時期尚早だ、甲状腺がんの増加は過剰診断だと批判する他の専門家もいる。
もちろん政府が両者の因果関係を認めることはない。それは日本のエネルギー政策にとって大いに不都合なのだ。日本は民主党政権時代に原子力発電からの撤退をいったん表明したが、自民党政権に戻ると、従来どおり原子力を利用し続けるという立場に変わった。
伴氏「2014年4月に決まった政府の『エネルギー基本計画』では、2030年時点で発電全体に占める原子力発電の割合を20~22パーセントに高めようという方針を打ち出しており、従来の原子力依存政策に戻ろうとしています。国民世論の8割は、脱原発を支持しているにもかかわらずです。政府と原子力産業界のみが原子力発電を推進しているのです。世論が政策に反映していない、ねじれた現象が起きています。」
しかし政府のエネルギー基本計画は、9日に決定した高浜原発の運転差し止めの仮処分を受け、既に非常な困難に直面している。伴氏は、この計画はおそらく来年にも見直さなければいけなくなるだろう、と予想している。