ロシアの高名な東洋学者でモスクワ国際関係大学の教授を務めるドミトリー・ストレリツォフ氏は、皇室典範の改正に関する国連の専門家たちの要求は奇妙に思われるとの見方を示し、次のように語っている-
「日本では2006年9月6日に悠仁(ひさひと)親王が誕生した10年前に、この問題は解決され、女子の皇位継承問題に関する議論は終了した。日本社会には、男女問わない長子のために皇位継承順位の変更を支持する人たちが大勢いるものの、日本は数世紀にわたって保たれてきた伝統の道を進んだ。そして日本は今、現代の問題を含むたくさんの問題を解決するための鍵を過去の歴史の中で見つけようとしており、伝統の保存や歴史の尊重に期待している。そしてもちろん、皇位継承システムの安定性や皇室システムの安定性は、日本国民を一つにしている要素だ。日本憲法には、天皇は日本国民統合の象徴だと記されている。日本人はこの伝統への尊重から自分たちのアイデンティティーを引き出し、たくさんの脅威がある不安定な現代世界の中で統合を維持し、現在の困難な状況の中で耐え抜くための鍵を見つけようとしている。国会での安倍首相の演説の意味はここにある。そもそもの初めから安倍政権も安倍首相自身も起源への回帰、過去の複雑な問題の答え探し、愛国教育の強化というスローガンを使っていた。そのため安倍首相の反応は、私には自然なものだと思われる。その他にも、安倍首相が今、多くの点において日本の精神の保存を求める民族主義的な団体や右翼団体からの支持に左右されていることを考慮する必要がある。さらに安倍首相は、韓国の慰安婦たちへの補償に関する決定について激しい批判を受けた。そのため安倍首相にとっては今、伝統的な日本的価値観の擁護者、保証人としての自分のイメージを取り戻すことが重要なのだ。」
なおストレリツォフ氏は、国連の専門家たちの求めについて、人権擁護、男女同権、性差別との戦いの傾向に合致していると指摘した。これは今も十分に関心が持たれているテーマであり、国連がその存在のさらなる意義を見出すのを可能とするだろう。一方でストレリツォフ氏は、国連の専門家たちの要求は日本の特異性、日本の歴史や伝統を考慮していないとの見方を表している。