この論文は、その理由として、以下の2点を挙げている。
第一に、第二次世界大戦後に形成されたパワーバランスは、今や存在しない。米国は、世界政治における自分達の主導的役割が、長年にわたり必要不可欠であると確信していた。しかし、欧州の国々は、すでにかなり以前から、自分達の問題を自主的に処理する能力を持っている。
第二に、NATOが創設された時、欧州政治の鍵を握る重要なパートナーとの協力の道具として、それは理解されていた。誰も、NATOが絶えず拡大するだろうなどとは、言っていなかった。しかしソ連邦崩壊後、米国の指導者達は、深く考えずに、あたかもソーシャルネットワーク上で、新しい友人を加えてゆくように、東欧から新しい同盟国を受入れるようになった。しかしNATO憲章第5条が、状況を本質的に複雑で困難なものにしている。この第5条には、NATO加盟国に対する攻撃は、NATO全体に対する攻撃とみなされると書かれている。その結果、米国は、自分達に何の関係もない軍事紛争に引っ張り込まれる可能性がある。