中国から投資家らが撤退をはじめ、外貨準備高が減少したため、中国金融当局は元高方向に人民元の為替レートを調整することを迫られた。その結果、中国人民銀行の平均為替レートは、1ドル6.4585元となった。それ以前だと、中国人民銀行は2月15日に急激に元を強め、1ドル6.5118元に人民元の為替レートを固定した。これを除けば元は一貫して値下がりしていた。
人民元の為替レートの急激な変動が世界の金融界を悩ませ続けている。そうでなければ中国当局が新たに、それも最高レベルで、元の値動きを制御しているのは実際には当局ではなく市場である、との声明を出すことはなかっただろう。中国の習近平国家主席はワシントンで開催された核安全保障サミットで米国のバラク・オバマ大統領と会談した際、「中国は、世界経済の減速を背景に輸出を後押しするために元を切り下げることを意図してはいない」と述べた。
現代発展研究所の専門家ニキータ・マスレンニコフは、市場における人民元の為替レートの乱高下について次のようにコメントを行った。
「世界の市場参加者らは中国の金融・為替市場リスクをグローバルな問題と見なしている。また、2016年における世界的な不況への滑り落ちの可能性を示す経済指標の一つと見なしている。このような機運は、現在、高い。したがって、国の指導者や銀行・金融セクターの高官らが元の安定性を強調する必要性はますます高まっている。状況は、多くの経済指標で、確かに、警戒すべきものとなっている。しかも、中国の経済成長の減速、鈍化ばかりが重要なのではない。国が異なるモデルの経済発展に切り替えることを決めたのだから、これは、全く自然なプロセスだ。問題は、構造改革が進めば進むほど、中国の金融システムの脆弱性に、すべての市場参加者が気が付かないではいられなくなっているということだ。こうした恐怖や危惧のすべてが取り除かれたと言えるかどうか、現時点で確信はない」
中国の政治と金融当局の行動がどれほど理想的なものであったとしても、元の乱高下は当分続く。これは世界的な問題だ。だからこそ米大統領との会談で習近平氏は、世界最大の経済、つまり米国と中国に対し、世界経済の持続的かつ均衡のとれた成長を維持するために、経済政策の協調度を高めることを求めたのだ。この傾向が期待通りに進めば、元とドルのペアの動向はより透明になる。