ロシアとの関係に関する日本の「外交青書」のこのようなトーンは長い間変わっていない。日本に関する専門家のドミトリー・ストレリツォフ氏は、冷戦終結後、ロシアは日本の「外交青書」で常にアジア太平洋地域における日本の重要なパートナーとして位置づけられていると指摘している。ストレリツォフ氏は、これは日本にとってロシアとの関係が二国間フォーマットのみならず、東アジアの安定性という視点から見た国際的な文脈でも重要だからだとの見方を示し、次のように語っている-
「これは露日関係の基礎に置かれているある種の恒常的なものだ。ロシアと西側の関係が今日緊迫していることを念頭においた場合、この恒常的なものは、さらに国際的な促進剤となっている。多くの人が露日関係はロシアと西側諸国の対話正常化に役立つと考えている。しかしロシアと日本の関係には、具体的に東アジア地域と関連した重要な二国間の文脈がある。
それは、すでに長年にわたって同地域の全ての国の主要な議題となっている中国の要素だ。これは中国の経済的台頭であり、中国の軍事・政治的立場の強まりだ。このような目に見えない背景の中で、ロシアと中国の関係は発展している。日本の外交は、これを考慮せずにはいられない。そのため日本にとってロシアとの関係は、そのものだけでなく、中国の台頭を考慮したアジア全体における全体的にバランスの取れた外交の文脈でも重要なのだ。」
それは、すでに長年にわたって同地域の全ての国の主要な議題となっている中国の要素だ。これは中国の経済的台頭であり、中国の軍事・政治的立場の強まりだ。このような目に見えない背景の中で、ロシアと中国の関係は発展している。日本の外交は、これを考慮せずにはいられない。そのため日本にとってロシアとの関係は、そのものだけでなく、中国の台頭を考慮したアジア全体における全体的にバランスの取れた外交の文脈でも重要なのだ。」
2016年版の「外交青書」では、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の訪日を早期に実現する方針が指摘されている。近いうちにも首脳会談の日程が明らかになる見込みだ。ストレリツォフ氏は、これは非常に重要だとの考えを表し、次のように語っている-
「この事実は、現段階でポジティブな構成要素が露日関係の前面に押し出されていることを物語っている。このポジティブな構成要素は、我々を近づける柱になると見られている。すなわち建設的な議題に集中するということだ。私はまさにこれが『外交青書』のような文書を作成する際に考慮されているのではないかと思っている。領土問題に関する日本側からの粘り強さや過度な圧力はなくなるかもしれない。個人的に、中期的には領土問題解決の見通しは弱く、実質的にはゼロに等しいと考えている。しかしこれは両国の首脳会談で何らかの合意が達成される可能性を排除しているわけではない。まさにそのため最大限ポジティブな雰囲気の中で首脳会談を実施するのが重要だ。『外交青書』は日本の外交官やロシア、その他の国にとって、日本がポジティブな議題に集中する意向であることを示す明確なシグナルとなっている。このポジティブというのは、領土問題に言及しなかったり、あるいはこの問題を隅に追いやるなど、必ずしも何らかの譲歩を意味しているわけではない。しかし建設的な気構えの表れは、ウクライナ危機を背景に凍結していた対話の再開に役立つだろう。」
ロシア大統領の訪日実施に関する露日の意向は、2015年11月のG20サミットの場で開かれた露日首脳会談で確認された。また日本の首相には、ロシアの地域への非公式訪問が提案された。