朝鮮半島の問題に詳しいロシア人専門家のゲオルギー・トロラヤ氏によれば、今日、北朝鮮の指導部では、アメリカは北朝鮮との関係を、昔のソ連との関係をモデルにして構築しようとしているという理論が支配的である。それはつまり、お互いを滅亡させることが確実である、という危険性を基にしている。そして北朝鮮は、自国の核弾頭の威力増大をデモンストレーションするという戦略を選んだ。
これは、アメリカに交渉のテーブルにつかせるためであり、アメリカと何らかの妥協点を見出したいためである。このようにして北朝鮮当局は、他国が侵略・干渉をしてきた際、北朝鮮には自国を守るに十分な能力があり、単に圧力をかけるだけでは無意味であるという内容のシグナルを世界に向けて発している。しかしながら、このような政策をとるにあたっては、北朝鮮自身にも大きな危険性が及ぶとトロラヤ氏は指摘している。北朝鮮の核弾頭プログラムについて討議が行われたアメリカから帰国したばかりのトロラヤ氏に見解は次のようなものである。
ある程度、この理論は生きている。1月初旬から、アメリカは静かに北朝鮮と対話を始める道を探しているのだから。ここにおいては、以前のように、核を放棄することに関しての前提条件さえも設けられていない。これはアメリカの立場において、肯定的な変化、雪解けといえる。北朝鮮が核の盾を利用して行うことができただろう挑発について言えば、これはむしろ、政治家と一般の人々を驚かせるためのものだ。
しかし北朝鮮への様々な場所の攻撃を想定したアメリカと韓国の合同軍事演習はこれとは事情が違う。米韓合同部隊は、陸上部隊を北朝鮮に上陸させる想定演習をしているし、物理的に北朝鮮の上層部を排除するトレーニングもしている。」
朝鮮半島にアメリカ軍が最新軍備を配置していること、そして戦略的に爆撃機や航空母艦を配備していることは、北朝鮮のプロパガンダ風のおしゃべりに比べれば、朝鮮半島の安定化のためには全く容易ならぬ、重大なことだとトロラヤ氏は見なしている。