ボタニーチェスキー・サードには、従来の地下鉄駅に加え、モスクワ小環状鉄道の駅が開業する予定だ。モスクワ小環状鉄道はもともと貨物用だったが、旅客用にリニューアルするための建設工事が4年前から進められてきた。現在、全工程の約8割の工事が終了している。モスクワ当局は、モスクワ小環状鉄道に誕生する31の駅全てで、TODを生かす予定だ。公共交通機関に基盤を置いた、駅・住宅・商業施設・オフィス等を一体にした街づくりは日本ではおなじみだが、モスクワではまだまだ主流ではない。点と点をつなげ、人・モノの流れをよりスムーズに、快適にすることが、新しいモスクワの街づくりに求められている。
ピオネール社は既に日建設計と組み、ボタニーチェスキー・サード駅の北側にマンション・コンプレックス「LIFE・ボタニーチェスキー・サード」を手がけた実績がある。今回のコンペの勝利によって、南側の開発権も得ることになり、この一帯に更に調和をもたらす開発ができそうだ。同マンションは発売直後から人気が出すぎたため価格を10パーセント値上げしたが、それでも売れ行きは好調である。第二期分譲ゾーンにはヤウザ川が流れている。日建設計のファディ・ジャブリ執行役員・グローバルマーケティングセンター中東・ロシア・インドグループ代表は「都会にありながら植物公園と川に囲まれたすばらしい立地。第二期は第一期とコンセプトを少し変え、家族で自然を感じながらくつろげるようなスペースを設けたい」と話している。家族連れがたくさん入居してくることを見越し、マンション・コンプレックス内に開校する私立学校「ロモノーソフ・スクール」のファサード・デザインも日建設計によって進められている。
モスクワ当局が日本の経験を活かすことに積極的なのは、昨年の東京視察によるところが大きい。2015年10月にモスクワ市のセルゲイ・ソビャーニン市長が東京を訪問した際、都市計画政策および建設を担当するマラト・フスヌリン副市長も同行していた。フスヌリン副市長は、東京駅やそれにつながるビル群などを視察。フスヌリン副市長に同行した関係者によれば、副市長は「東京駅から全てが繋がっている」ことの利便性を肌で感じ、大変感銘を受けていたという。フスヌリン副市長は今年4月に自らボタニーチェスキー・サードTODの現場視察を行い、ロシア国営テレビの取材に対し「これは非常に高いレベルのプロジェクトで、モスクワ北東行政管区を飾るにふさわしい、誇りにすべきものになると考えています」と述べた。