安倍首相は、「オバマ大統領に日本の首相として断固抗議した。沖縄だけでなく、日本全体に大きな衝撃を与えており、こうした日本国民の感情を、オバマ大統領にはしっかりと受け止めて頂きたい」と語った。だがロシア人日本専門家のアナトーリー・コーシキン氏はこうした形式的な抗議を行ったところで日本領内における米軍人の犯罪はなくならないとの見方を示している。
「米国人が日本領内でとんでもない犯罪を起こすたびに、これは日本国民の怒りと憤慨を呼んできており、国民自身、終わりのない戦争状態で生活を続けることに疲れたと語っている。この状態は特に沖縄で強く感じられる。沖縄の住民は自分自身の生命の危険も近しい人間、子どもたちの生命の危険も感じているからだ。
米国側ももちろん措置は講じており、戒厳令を敷いたり、夜間は基地の外に出るな、アルコールを飲用するなといろいろ禁じている。だがこれらはすべて中途半端なものだ。やはりこの問題を解決しようとなると、米軍基地には日本から、沖縄から出て行ってもらう以外ない。これを沖縄住民は執拗に求めているのだ。
日本の首相が今回、個人的に抗議を表さざるを得なかったということがこの抗議に特別な重みを与えている。だがこんな形式的な抗議で日本人の気持ちを静めることはできない。状況を一層緊張化させているのは、これがG7サミットを目前に控えて起きたということだ。これは日本国民および日本のプレスがサミットに参加しに来た米大統領へ示す態度に表されないわけにはいかない。
日本領内に米軍が駐留し始めてこのかた、溜まりに溜まった米軍人の犯罪の事実によって日本には、特に沖縄県内には米軍人に対してのみならず、全体として米大統領府に対する断固とした抗議の姿勢が生まれてしまっている。日本はもうすぐ議会選に突入するが、野党が結集し、米国の圧力から日本を解き放ち、米国の保護領という立場から日本を解放するため、この暴力の事実を利用する可能性も私はあると思う。もちろんこれはサミット開催時に日本で組織される抗議行動にも現れてくるだろう。これによって日本の治安維持機関はサミットのゲストを守るため補足的な保護策をとらざるを得なくなると思う。
だが重要なのはこの状況は永遠に続くわけではないということだ。2008年に民主党政権が誕生した時、当時の鳩山由紀夫首相は、米軍基地が密集する沖縄からせめてその一部でも撤退させるということを自らの目標に掲げていた。この課題は残り続けていくだろう。それだけではない。トランプ次期米大統領候補の呼びかけを思い起こしてほしい。トランプ氏は言い方は別だが、日本領内における米国の軍事アピアランスの縮小に事実上賛成を示したではないか。これは日本の野党にとっては、安倍氏が常に呼びかけている日米軍事同盟の強化という路線に反対する論拠になりうる。
そういえば安倍氏はソチにいってプーチン氏とあったが、これは米国側からの禁止に反してのことだったといわれているが、そうではない。これについては核安全保障サミット時の安倍・オバマ会談で話はついていた。これが示すことはあらゆる外交的な抗議、反対は形式的なものだったということだ。ところが実際は安倍氏自身もその背後にいる自民党、つまり日本のネオ保守も右翼ナショナリスト勢力もこの先、自国の軍事、戦略プログラムを米国のプランとこの上なく緊密に結びつけるという路線をとり続けるだろう。これはつまり、米軍基地は残存し、ひょっとするとより強化されてしまうことを意味する。ということは日本の一般市民に対する米軍人の犯罪はこの先も続くということだ。」
「スプートニク」:民主党が選挙で勝利した場合、米国の軍事アピアランスは縮小するだろうか? それを目標に掲げた鳩山由紀夫氏が米国には何の影響も及ぼすことなく、早々に首相職を退かざるをえなかったことは記憶に新しいが。
「日本国民の中には米軍人が日本領内に存在するという事実自体にネガティブな意識が出来上がっている。ネガティブな感情は溜まっていくものだ。もし野党が努力を結集し、本腰を入れてこの問題に取り組んだならば、与党が国民に対し、この先軍事分野で米国との関係を強化する必要性を証明することは容易ではなくなる。とはいえ、もちろん中国の増強、北朝鮮からの脅威など、持ち出すネタはあるが。またロシアの脅威については、ソ連時代のときほど、今このことをとやかく言う人はそう多くはないが、ロシアは日本の軍事文書では潜在的敵国に留まっている。だがこの論拠はいつもいつも力を持つわけではない。こうした脅威を信じる日本の新しい世代はますます少なくなってきている。このため、野党がこれからも日本における米国の覇権を弱めるよう求めていくならば、遅かれ早かれなんらかの具体的成果につながる可能性があると思う。」