「スプートニク日本」の取材班は、そんなロシア料理を日本の皆さんにご紹介したく、今ロシア国内で勢いを増すロシア料理のチェーン店「ヴァレーニチナヤ№1」を訪れた。
「ヴァレーニチナヤ№1」という店名は、日本の餃子のように小麦粉を材料とした皮で肉などの具を包んで茹でたり、揚げたりする「ヴァレーニキ」という料理に由来している。ただロシア風餃子「ヴァレーニキ」は、中に入れる具のバリエーションが豊富だ。豚肉や牛肉などの肉から、キャベツ、ジャガイモ、キノコなどの野菜、チーズ、さらにサクランボやブルーベリーなどの果物を入れた甘いものまである。
ロシアの伝統料理を専門とする「ヴァレーニチナヤ№1」は、経済危機の最中にあるにもかかわらず、現在モスクワに10店舗、サンクトペテルブルグに1店舗を構え、規模を拡大し続ける人気のレストランだ。同レストランの料理長アリョーナ・ソロドヴィチェンコさんは、ロシア人は再びロシア料理に関心を持ち始めたと語る。27歳という若さでロシアの首都モスクワ、さらに北の都サンクトペテルブルグにある全店舗のシェフたちをまとめるアリョーナさんは、「私たちのレストランでは野菜も肉も魚も全て国産のものを使っているため、ロシアに対する制裁は全く関係ない」と笑い飛ばす。
ロシア人は人のぬくもりが感じられる手作りのものを大切にする。「ヴァレーニチナヤ№1」では、ロシア国内で生産された食材がシェフたちの手によって子供の頃に家庭で食べた懐かしい味のする料理に仕上げられている。アリョーナ料理長は、3か月ごとに更新されるメニュー開発も行っている。「なにかひと味足りない」と感じる時、アリョーナ料理長は、料理が得意な祖母や母親からアドバイスを受けるという。そうすると「これだ!」という味に出会えるそうだ。
なお「ヴァレーニチナヤ№1」の常連は、ロシア人だけではない。「新たな冷戦」とささやかれる今日だが、米国の外交官ビクトリア・ヌーランド氏は、モスクワに訪れると同市中心部アルバート通りにある「ヴァレーニチナヤ」を訪れ、毎回「シベリア風ペリメニ」を頼むという。やはり美味しいものに国境はない。
A/S #Nuland and Amb Tefft enjoying some pelmenni with smetana (Tefft's favorite) before tomorrow's day of meetings. pic.twitter.com/bJnWwGJxZX
— Will Stevens (@WBStevens) 17 мая 2015 г.
「ヴァレーニチナヤ№1」は、レストランの内装にもこだわりをみせる。ソ連時代の雰囲気を再現したレストランは、店舗ごとにテーマが設定されている。例えば取材に訪れた地下鉄トレチャコフスカヤ駅の店舗は、スポーツをテーマとしているため、店内にスケート靴や鞍馬などが置かれている。さらに「ヴァレーニチナヤ」は、価格もお手頃だ。米外交官ヌーランド氏お気に入りのシベリア風ペリメニは、260ルーブル(約450円)。「ヴァレーニチナヤ」では、ロシアの伝統料理を手ごろな価格で、ノスタルジックな雰囲気の中で楽しむことができる。
なおアリョーナ料理長が日本人におすすめする料理は、「オリビエ」サラダ、赤かぶのスープ「ボルシチ」、「ヴァレーニキ」や「ペリメニ」、「カツレツ」、そしてデザートからは「ナポレオン」や「メドヴィク」という名前のケーキ、「スラートカヤ・カルバサ(甘いサラミ)」と呼ばれるチョコレートのお菓子だ。「ボルシチ」、「ペリメニ」、「カツレツ」は想像しやすいが、ロシア料理を知らない人にとって他の料理はなかなかイメージが浮かんでこない。しかしロシア人にとっては、野菜をサイの目に切った「オリビエ」サラダはお祝いの席の定番料理であり、パイ生地を重ねた「ナポレオン」ケーキや蜂蜜を使ったケーキ「メドヴィク」は、自宅にお客さんをお招きした時などにつくるお気に入りのケーキであり、サラミのような見た目をしていることから「甘いサラミ」と呼ばれるチョコレート菓子は、子供の頃によく祖母や母親がつくってくれた懐かしいデザートだという。
ロシアの人たちにとってロシア料理の一品一品は子供の頃の思い出と深く結びついている。そのため見た目は同じようでも味にこだわる。ロシア料理では「ホッとする味」、ロシア語で「вкус детства(フクース・ジェーツトヴァ、幼い子供の頃の味)」と言われる「おふくろの味」が欠かせないのかもしれない。そんなロシアの「おふくろの味」を日本の皆さんにも味わっていただきたく、アリョーナ料理長がソロドヴィチェンコ家に代々伝わるレシピを参考にして考案したジャガイモとサクランボのヴァレーニキのレシピを伝授してくれた。お時間のある時に、ぜひお試しいただきたい。
「スプートニク日本」のアレクサンドラ・アリューシナ記者が、「ヴァレーニチナヤ№1」トレチャコフスカヤ店を訪れ、全店舗のシェフたちを率いるアリョーナ・ソロドヴィチェンコ料理長にお話を伺った。27歳のアリョーナ総料理長は、日本人が抱くイメージとは違う元気で華やかなシェフだ。アリョーナ・シェフは、レストランについて、そして日本人におすすめしたいロシア料理について語ってくれた。(撮影はダリヤ・グリバノフスカヤ記者)。
「ヴァレーニチナヤ№1」の「ジャガイモのヴァレーニキ」
(レシピ考案者:アリョーナ・ソロドヴィチェンコ)
皮の材料:
小麦粉 350g
卵 1個
水 300g
塩 ひとつまみ
具材:
ジャガイモ 500g
玉ねぎ 0.2㎏
ひまわり油 100g
塩、コショウ お好みで
仕上げ:
バター
サワークリーム
作り方:
小麦粉、卵、水、塩を混ぜてこねる。こね上がったら、絞った濡れた布をかぶせて約20分生地を休ませる。続いて具材をつくる。大きめのみじん切りにした玉ねぎを、熱したひまわり油で黄金色になるまで炒める。ジャガイモを茹でてつぶし、そこに炒めた玉ねぎを加えて、塩こしょうで味付けし、冷めるまで待つ。
打ち粉をして生地を麺棒で薄くのばし、丸い形のコップなどを使って丸くくり抜く。皮に具材をのせて、しっかり包む。沸騰したお湯に入れて5分茹でる。茹であがったら皿にのせて、バターとサワークリームをかける。
「サクランボのヴァレーニキ」
皮の材料:
小麦粉 350g
卵 1個
水 300g
塩 ひとつまみ
(お好みで)
バリニン 2g
シナモン 3g
具材:
冷凍さくらんぼ 500g (解凍しておく)
砂糖 100g
仕上げ:
バター
粉砂糖
サワークリーム
シナモン
作り方
小麦粉、卵、水、塩を混ぜてこねる。こね上がったら、絞った濡れた布をかぶせて約20分生地を休ませる。打ち粉をして麺棒で薄くのばし、丸い形のコップなどを使って丸くくり抜く。1枚の皮にサクランボ2-3個をのせ、砂糖(あるいはバニラシュガー)をふりかけてしっかりと包む。5分茹でる。茹であがったら、皿にのせてバター、粉砂糖、サワークリームをかける。お好みでシナモンをふりかけてもよい。
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