チェルノブイリ事故後、健康管理および子供の体への放射線の被害最小化のために、モスクワに対放射線防護学術臨床児童センターが設立された。一貫してその代表を務めているのがラリサ・バレワ博士だ。これは、放射能に被曝した児童の診断、治療、さらにはリハビリテーションまでのサービスを提供する、ロシアで唯一の機関だ。センターは数十年の長きにわたり、子どもの身体に対する放射線の長期的な遺伝的影響および世代間の影響を含め、子供の身体への影響、および慢性低線量被曝の特徴の研究を行っている。放射線災害にあった世代から2世代目、3世代目の子供が検査、治療、リハビリを受けている。センターの努力によって、出生前を含め放射線の影響下に陥った0〜18歳までのすべての子供たちに関する膨大なデータが集められた。 こうしたことから、センターはロシア各地から、さらには国外から、多くの研究者、学生を引き付けている。日本の専門家はセンターの常連だ。現在は大阪大学名誉教授野村大成氏が共同研究中。研究テーマは放射能による子供の発癌リスク。 センターには日本人学生も訪れる。筑波大学の村本耀一さんは今月3日、留学を終える。村本さんは帰国に先立ちスプートニクのリュドミラ・サーキャン記者のインタビューに答えてくれた。
専門は腫瘍学で、放射線による治療に興味を持っており、今勉強しています。癌は日本でも大問題で、高齢者も増えていますし、原発事故の関連でも、癌がこれから増えてくるかもしれません。 センターでの研修は2週間でした。チェルノブイリから30年、親、子供、孫と継続的に経過を見ることで、今まで分からなかった放射線の影響などがわかってきています。
そういう研究をしているのはこのセンターだけでしょう。日本でも同じようなことをしなければなりません。 ロシアはしっかり全体的な調査をしていて、そのデータを研究に使えるような体勢になっている。日本とは経験に25年の差があります。ロシアから経験を学ぶ必要があります。
初ロシアでしたが、ロシアの医学生たちとの交流を通じ、「遠い国」というイメージが覆され、あまりかわらない、絶対仲良くできる、協力できる、と思いました。 今後は、まずは医者として今できる治療に従事し、足りないところについて研究ができたらいいと思っています。